獄中短歌「百回休み」014
冤罪は五パーセントはあるだろう 君も捕まったら分かるだろう

 実際そう思う。
 ここで云うのは、モノホンの冤罪と、裁判が公正におこなわれるのなら無罪にすべきケース、つまり仮にほんとにやってたとしても証拠が不充分すぎるケースとを合わせた数字で、私が獄中で見聞きした実感として、それくらいあると思う。
 まずこれは百パー冤罪だなと思ったのは、見るからに知恵遅れの中年男性で、窃盗の疑いをかけられていた。「おれはやってない、だまされた」と繰り返し云っていた。嘘をついてるようには見えなかった。
 足を洗おうとしたヤクザが、その代償に組から別の組員の罪を着せられたケースもあった。しかも警察もそのことを把握しているようだった。彼は最初否認したが、警察は、これを引き受けなければ過去に見逃してやったもっと重い罪を蒸し返すぞと彼を脅したそうだ。彼はやってない罪を引き受けて、刑務所へ行った。
 「冤罪」とはまた別の問題かもしれないが、ある事件で無罪判決を勝ちとったヤクザが、つまり捜査当局のメンツを潰したわけで、徹底的に監視されてショボい容疑でまた拘束されていた。しかもいったん無罪となった容疑も、二審で有罪判決となり、彼は二件ぶんの懲役を務めることになった。逆転有罪判決を云い渡した裁判官は、後に職務にからんだ大きな不祥事を起こして話題となり、辞職した奴だ。
 ひどい国だと心底から思う。