獄中短歌「百回休み」011
ひとかどの犯罪者なり 二月目 夢の中でも獄中にあり

 「百回休み」中、最も稚拙な歌の一つだと思う。
 ちょっと思いついたネタ(実話ではあるのだが)を、どうにか五七五七七にハメこんでみました、という以上ではない。
 無理のない話で、実はこれが私が最初に詠んだ短歌なのである。
 逮捕されて二、三ヶ月たった頃だったろうか、獄中から毎週購読していた『週刊SPA!』の文化欄で、最近若者の間で短歌がちょっとブームだ、みたいな記事を読んだ。二十代の女性歌人による、いくつかのポップな歌集が紹介されていて、うち引用されていた佐藤真由美氏の二、三の歌に深く感銘を受けた。
 短歌ってのはこんなに面白く、かつかなり複雑な心情をそこに込めることも可能なのだと初めて気づかされた。
 同時に、別のところでも書くが、ワープロではなくペンでちゃんとした文章を書くことができないカラダ(アタマ?)になっている自分に気づいて愕然とし、せっかくの非日常体験の渦中でその心境を書き残しておかなければと思うのに、ちっとも書けなくて焦ってもいた。
 要はワープロでなければ効率的に推敲の作業ができないことが大きいのだが、わずか三十一文字で完結する短歌という形式であればこの問題は解決する。
 私はさっそくノートに向かった。
 で、まず完成させたのがこの歌というわけ。
 出来は稚拙だが、いきなり“外山節”というか、深刻な状況の中でつい笑いに走ってしまう方向性が全開になっているのには我ながら感心する。