熊本市議選 街頭演説原稿

   汎用

 熊本市民のみなさん。
 市議会議員候補の外山恒一です。
 どいつもこいつもイメージばかり、選挙カーで自分の名前を連呼するばかり。
 そんな中、ただ一人、ポスターでも選挙公報でも、文字をいっぱい使って熱く主張している外山です。
 こういう短い喋りでは、内容のあることは伝えにくいので、ぜひとも掲示板のポスターを見てください。
 外山のポスターは2種類。どちらも見逃さないように。
 市内いたるところに、選挙ポスターの掲示板があります。
 他の候補のポスターと見比べてご覧なさいよ。
 イメージだけじゃない、ちゃんと主張してる候補は私・外山だけですよ。
 他のあさましい候補どもと違って、こっちは当落度外視でやってるんだ。
 当選することよりも、言いたいことを言うために選挙に出たんです。
 それが支持されれば通るし、支持されなければ通らない。
 選挙って本来そういうもんでしょ。
 外山の主張は掲示板のポスターに詳しく書いてあります。
 他の候補の、イメージだけのポスターとはぜんぜん違います。
 支持できる、と思ったら、ぜひ外山に一票を。


   刑務所前演説

 熊本刑務所に囚われのみなさん。
 私は、現在おこなわれている熊本市議選に立候補している、外山恒一という者です。
 他の候補者の選挙カーが走り回るのを横目で見ながら、昨日までひたすらポスター貼りに専念していました。
 ですから、今からここでおこなうお話が、今回の私の第一声です。
 刑務所に囚われの身となっているみなさんに選挙権がないのはよく知っています。
 選挙関連の事件を起こした人は仕方ありませんが、そうでない方々の選挙権まで剥奪するというのは理屈に合いません。この国の監獄制度はおかしなことばかりです。
 実は私も、3年ほど前まで刑務所にいた人間です。ここ熊本刑務所に収容されるのは、長期刑の方々ばかりだと聞いています。私は福岡刑務所に収監され、この国の監獄制度のろくでもなさを、みなさんに比べるとわずか2年のションベン刑でしたが、身をもって体験しました。
 監獄の中でいろんな方々の話を聞いた上で、私は、この国の冤罪率は、5パーセントくらいはあるなと感じています。つまりみなさんの中にも、20人に一人くらいは、無実の罪で囚われている方もいると思います。この国の裁判制度は本当にろくでもない。
 もちろん、本当に事件を起こした方々の方が多いでしょう。
 しかし、そういう方々に対しても、現在の刑務所の処遇のあり方はやはりろくでもない。
 何も知らないマスコミのバカ連中や、何の苦労もなくエリートの道を歩んできた政治家どもは、日本の刑務所は加害者の人権に配慮しすぎているなどとデタラメを垂れ流しています。しかし私は、自らの身をもってこれを体験し、その実態を知っています。
 日本の監獄は、たしかに諸外国と比べて、看守の暴力などの問題は少ない。もちろん多少はある。
 日本の刑務所の独特のつらさは、別のところにあります。
 それは、日本的なお役所仕事、非効率で、手続きにやたらうるさく、すべてを画一的に進めていく日本独特のお役所仕事に、囚人は24時間、365日、えんえんと付き合わされるというつらさです。
 読みたい本ひとつ手に入れるのに、1ヶ月かかることもざらです。
 外の世界はネット社会で、自宅から本を注文して、翌日には読めるというのに、なんという非効率でしょうか。
 似たような問題は、他にもたくさんあるはずです。それはみなさんの方がよくご存知でしょう。
 私はわずか2年ですみましたが、こんなろくでもないお役所仕事に、5年も10年も、20年も30年も付き合わされるみなさんは、本当に大変だと思います。
 私は今、選挙に出ていますが、当選するかしないかは二の次でやっています。
 それよりも、私はこのように、言いたいことを自由に言うために選挙に出た次第です。最近は、こんなふうに刑務所の前で勝手に演説したりすると、すぐに警察がやってきて、道交法違反だなんだと屁理屈をこねて、中止させられたり、下手すると逮捕されてしまいます。しかし、選挙ならこんなふうにやりたい放題、言いたい放題です。私はこれをやるために選挙に出たんだ。
 こら刑務官ども。囚人の発言権がないのにつけこんで、てめえらの役人根性を温存させるんじゃない。革命の暁には立場逆転させてやるからな。
 てめえら刑務官は、全員ひっとらえて刑務所にぶちこんでやる。とくに刑務所長をはじめ、幹部どもは全員無期だ。革命後の刑務所は、てめえらのと違って、囚人の人権に配慮するが、元刑務官、元警察官、検察官、裁判官どもは、今のままの刑務所にぶちこんでやる。てめえらがどんなにろくでもない仕事してきたか、わが身でもって体験させてやるからな。
 それがいやなら、今日からでも囚人の待遇改善に奔走しろ。少しは囚人の身になって仕事しろこの野郎。

 最後に、熊本刑務所に囚われている囚人のみなさん。囚人同士のいじめだけはやめてください。私はずっと独居房にいたので詳しくは知りませんが、とくに雑居のいじめはすさまじいと聞いています。みなさん。敵は官です。囚人同士はお互いにいたわり合って、助け合って過ごしてください。
 それから刑務官ども。監獄にはそういう深刻な問題もあるんだよ。てめえらも気づいてるだろうが。
気づいてて放置してんのは犯罪だぞ。ことなかれの役人根性を少しは改めろこの野郎。
 今のままのろくでもない処遇を続けるなら、ほんとに革命起こしててめえらを刑務所にぶちこむぞ。

 以上、元懲役の熊本市議会議員候補・外山恒一の第一声でした。
 囚人のみなさん、一日も早い釈放を祈っています。体に気をつけて、がんばってください。
 刑務官どもは、深く反省するように。


   パトカー追跡演説

 パトカーに乗っている警察官に告ぐ。
 私は、熊本市議会議員候補の外山恒一である。
 署に戻って、同僚の諸君にも伝えなさい。

 最近の交通取締りのひどさは何だ。
 最近取締りがやたらと多すぎるぞ。
 ドライバーのみなさん、そう思いませんか。
 本当に危険な運転を取り締まるのはいいんだ。
 しかし、諸君の取り締まりは、あれはもう、取締りのための取り締まりじゃないか。
 交通に危険を及ぼさない、軽微な違反までいちいち杓子定規に取り締まるなよ。
 公式には、ノルマなんかないと言っているようだが、ノルマが存在することはもうバレバレなんだよ。
 ドライバーのみなさんも分かってますよね。
 こいつらポリ公は、自分らのノルマのためにみなさんを取り締まって、なけなしのカネをふんだくってるんだ。
 そういう取り締まりはやめなさいよ。
 諸君だってもともと、市民に嫌われるために警察官になったわけじゃないだろう。
 中には、正義感に燃えて警察の職を選んだ者だっているんだろ?
 市民に愛される警察にならなくちゃだめだ。
 そのためには、取締りのための取り締まりはもうやめることだよ。
 本当に危険な、重大な違反だけ取り締まってればいいんだ。
 それならこっちも納得するよ。
 どうしても取り締まりたいなら、じゃあ軽微な違反については、とりあえず警告ですませろ。
 3回も4回も、5回も6回も違反を繰り返す、悪質なドライバーだけを処罰してくれ。
 ドライバーのみなさんも、それなら納得しますよね。
 ドライバーのみなさん。
 私は市議会議員候補の外山恒一です。
 最近の警察の横暴に、本当に頭にきています。
 私が当選することはないでしょうが、万が一当選したら、議会で警察を叱り飛ばします。
 まだ誰に投票するかお決めでない方は、とりあえずダメ元で私に一票投じておいてください。
 警察嫌いの市議会議員候補・外山恒一です。
 ただいま市内をパトロールし、警察官を取り締まっています。

 改めて、パトカーに乗っている警察官に告ぐ。
 署に戻って、同僚の諸君にも伝えなさい。
 最近の交通取り締まりはやりすぎだ。
 取り締まりはほどほどにしなさい。
 危険で重大な違反だけを取り締まりなさい。
 ドライバーのみなさんに嫌われない、愛される、信頼される警察に変えるために、まずパトカーに乗っている君が努力を始めなさい。
 今日はこれぐらいで勘弁しといてやる。
 カツ丼でもおごってやりたいところだが、選挙違反になるのでそれはできない。
 市民に愛される警察になれよ。
 じゃあな。


   大学前演説

 熊本大学の諸君。
 私が市議会議員候補の外山恒一である。
 つい先日まで、あの東京都知事選に出て、やたらと騒動をまきちらしていたので、私・外山恒一のことを知っている諸君もいるだろう。
 知らない者は、すみやかにネットで検索しなさい。

 諸君。
 諸君はなぜ学生運動をやらないのか。
 大学は、学生運動をやるために入るものだ。
 学生運動のない大学で、いくら勉強したって何の意味もない。
 とくに文系の諸君。諸君がやっている学問は、哲学や社会学はもちろん、文学や心理学のたぐいも、すべて先人たちの政治的な苦闘の中から生まれてきたものだ。
 身をもって政治運動を体験しないと、文系の学問は本当には理解できないぞ。
 理系の諸君だってそうだ。
 自然科学や技術それ自体は、政治と関係なく成立する。しかし、その知識や技術を社会的にどう役立てていくかは政治と密接な関係がある。理系の諸君も、政治運動を体験しておかないと、せっかく身につけた知識や技術の役立て方を誤るぞ。
 ともかく、学生は学生らしく、まずは学生運動をやりなさい。
 学生運動のない大学にいくら通ったって全部無駄だ。
 学生運動のない大学には、今すぐ退学届をたたきつけろ。
 さもなくば、諸君が自ら学生運動を始めなさい。
 やり方がわからなければ、教えてやるから私のところに来なさい。連絡先はポスターに書いてある。

 ポスターは必ず読んでくれよ。
 二種類あるから、気をつけて探してくれ。
 しかしそこの掲示板を見てみろ。
 どいつもこいつも、顔写真のアップに、福祉がどうの改革がどうの、ほんの二言三言のイメージ選挙をやっている。
 ほんとに選挙なんかろくでもない。こんなやり方で、社会の舵取りをする議員を選ぶことに、私は意味があるとは思えない。
 ポスター使って、言いたいことを全面展開してんのは私だけだぞ。
 選挙なんかくだらない、どうせ選挙じゃ何も変わらない、それを大々的に言うために、わざわざ立候補している外山恒一だ。

 それじゃあ、ユー・チューブなんかでチェックして、私のことを知っていた、一部の優秀な諸君のためにサービスだ。
 ネットに流出して、ユー・チューブで世界一のアクセス数を誇る人気動画となり、東京都選管を慌てふためかせた、伝説の政見放送を、今からライブで再現してやろう。
 BGMつきでお送りする。

  (略)

 以上だ。
 今回も当落度外視の選挙戦だ。
 ただし今回は、不本意ながら諸君に私への投票をまじめに呼びかけたい。
 というのも、私はつい先日、東京都知事選で300万円の供託金を没収されたばっかりだ。
 今回さらに没収されるのだけは勘弁してほしい。
 当選しなくてもいいから、供託金だけは諸君の力でなんとかしてほしい。
 もちろん、今回は当選覚悟だ。まかりまちがって当選したら、一瞬ビビった後、それはそれでマジメにやるつもりだ。
 他のパンピー候補どものポスターと見比べてみろ。私の方が百倍マシだろう。
 どうせろくでもないことばっかり話し合ってる、熊本市議会を混乱の坩堝に叩き込んでやる。
 そんなわけで頼んだぞ諸君。
 また明後日来る。
 学生なんだから、ちゃんと学生運動しろよ。
 じゃあな。
 異端の市議会議員候補・外山恒一であった。


   (結局やれなかった)熊本高校前演説

 高校生の諸君。
 市議会議員候補の外山恒一である。
 諸君に選挙権がないのはもちろん重々承知の上だが、私は別に当選をめざして選挙に出たわけではない。選挙制度を利用して、諸君に公然と呼びかけるために選挙に出ているのだ。
 学校生活は楽しいか?
 楽しいと答える奴に用はない。
 諸君の中には、おそらく少数ながら、今の自分の生活に疑問を感じながら日々を費やしている者がいるはずだ。
 私はそんな少数派の諸君に呼びかけている。
 詳しくは、あちこちの掲示板に貼ってる、私のポスターを見てくれ。ポスターは2種類あるから、どちらも見逃さないように。
 あるいは、ネットで私の名前で検索をかけてみてくれ。
 「外山恒一」で検索すれば、私の詳しい主張の中身や、実は私の恥ずかしい動画なども見られる。
 私の動画は、つい先日まで出ていた東京都知事選でおこなったテレビ演説の映像で、これはYOU TUBEという動画投稿サイトに流出して、なんとアクセス数世界ナンバーワンという記録を作った名演説だ。 私に興味を持ったら、各自いろいろ調べてくれ。サイトもあるし、本屋へ行けば私の著作も注文できる。
 若いんだから、主体的に行動に移さなければだめだ。

 諸君の中には、大学進学を考えている者も多いだろう。
 しかしやめておけ。
 現在の大学では有意義なことは何も学べない。
 なぜなら、現在の大学には、学生運動がないからだ。
 学生運動って分かるか?
 学生がおこなう政治的な運動のことだ。日本では60年代がピークで、だいたい70年代いっぱいまで持続していたが、ここ20年ほど、まったく壊滅状態にある。
 諸外国ではそんなことはない。先進国にも後進国にも、今でも大規模な学生運動が存在する。
 そしてよく聞け諸君。
 とくに文系の学問というのは、そういう学生運動の模索の中から生まれてきた学問がほとんどなんだ。つまり学生運動を身をもって体験してみないことには本当には理解できないのが文系の学問だ。
 だからとくに文系の諸君は、学生運動のない現在の大学に進学するのは、まったく時間と労力の浪費にしかならない。
 理系の諸君だって似たようなものだ。科学の世界それ自体は中立だが、それをどのように社会に役立てるかという段階で、必ず政治的な問題と結びついてくる。つまり諸君が理系の学問を修めて、それを社会に応用しようとしたときに、政治運動を体験していないと、その使い方を誤る危険性が高まるのだ。
 つまり結局、学生運動の存在しない、現在の日本の大学に進むことには、何のメリットもないんだよ。
 それでも大学へ行きたいという者は、まず私の塾にこい。
 半年間タダで食わせてやるから、私のもとで修行しろ。
 政治運動・文化芸術運動、どちらに進んでもそれなりの優秀な活動家としてやっていくために必要な、最低限の教養とセンスを身につけるための塾だ。
 どうせ大学なんて、一年二年浪人して進んだっていいだろう。
 予備校にでも行くつもりで、半年間、私のところへ来い。
 私の塾で半年修行した上でなら、大学に進むことも無駄ではなくなるだろう。

 もちろん、今すぐ私のところへ来てもよい。
 高校だって、通う意味なんか本当はないからな。
 私は中卒だが、現在では日本を代表する革命的知識人になった。
 学校なんか行かなくても、本物の知性と教養は身につくんだよ。むしろ本物の知性と教養を身につけたいのなら、学校なんか行かないほうがいい。
 諸君はいったい何のために毎日勉強しているのか?
 答えられる者はいるか?
 進学のため、就職のためというのは理由のうちに入らん。
 諸君は、目的のない学問を強いられているんだ。
 そんなもの、ほんとの学問ではない。
 目的を持たなければ、学問は死ぬ。
 私には目的があった。このくだらない社会を、根本的に変革するという目的だ。私はその目的に向かって、独力で学問を続けた。
 刑務所に入ったこともある。刑務所の独房の中でも、私は学問をやめなかった。
 諸君。本当の学問というのはそれくらい厳しいものなんだ。
 本当に何か意味ある知性と教養を身につけたいと思うなら、私のところへ来い。
 それを言うために来た。

 毎晩夜8時に、新市街アーケードで諸君を待っている。
 私と直接話をしてみたいと思ったら、夜8時に新市街アーケードに来てくれ。
 それから、私の2種類のポスターと、サイトのチェックも忘れるな。
 興味がわいたら人に聞く前にまずは自分で調べられることは調べる。それが学問の基本だ。
 ポスターやサイトを見た上で、いよいよ興味が湧いたら、私に会いにきなさい。
 では次の場所へ出かける。
 授業妨害もうしわけない。と言いたいところだが、どうせろくな授業じゃないだろ。