神のサイン

 文房具屋なんかに、いろんな姓の印鑑を詰め込んだ、回転式のなんと云うのか、あるじゃないか。
 あれをボーッと見つつ、もやもやと考えていた。
 もちろん「外山」の印鑑は持っているわけだが、まったくカンケーない、別の姓の印鑑を意味もなく持っているとオカしいかなあ、と。ペンネームとか偽名とかいうんではなしに。
 最初はまあ、「大杉」とか「吉本」とか「三島」とか、「意味」から入ってみたんだが、それだけではどうもあんまり面白くない。
 次はもちろん、インパクトだ。「黒沼」とか「権藤」とか「勅使河原」とか。でもやっぱりアイデアとしては今ひとつ。
 いっそごくフツーの姓をただ意味なく、というのはどうか。なんでもいいけど、とりあえず「佐藤」とか「鈴木」とかは避けて、「梶井」とか「吉村」とかテキトーな、あるいはいっそ思い切って「船岡」とか!?
 これといった決定打が出ないなあ、と気持ち悪くなりかけながらぐるぐる回し続けて、ついにそれら数百本の印鑑の中の一つに目が釘付けになった。
 そういえばそんな苗字は確かにある。

   

 これを買うことに決めた。
 「外山恒一 神」、うーん、すごくいい!
 以上どうでもいい話。