原発推進派懲罰遠征
 
凱旋トークライブ

懲罰遠征3勇士(外山恒一・山本桜子・東野大地)
司会 中川文人

2012年12月29日 東京・高円寺「素人の乱12号店」にて
2013年夏刊行予定『デルクイ02』掲載予定

中川 定刻となりましたので始めます。本日、司会を務めます中川文人です。共産主義者でございます(笑)。日本にもいろんな共産主義者がおりますが、私はちゃんとレニングラード大学、つまりレーニンさんが通い、プーチン大統領、メドベージェフ大統領を輩出した大学の出身で、グローバル・スタンダードの共産主義者であります。グローバル・スタンダードの共産主義者と日本の左翼では何がどう違うのかといいますと、ニューヨーク・ヤンキースと日大付属なんとか高校の野球部くらいの違いというか、ベルリンフィルハーモニーと和光市市民交響楽団くらいの違いというか、そのくらいの違いがあります。あんまりこういうことを云いますと、ただでさえ少ない友だちがより少なくなる、というか、ただでさえ多い敵がより多くなりますので、このへんにしておきますが、まあ、そこらの左翼とはちょっと違うんだな、ということさえ分かっていただければ結構です。
 というわけで、九州を拠点とするファシスト集団「我々団」という世にも恐ろしい陰謀結社がありまして、その方々が今回の総選挙で「原発推進派懲罰遠征」という恐ろしい闘いを展開しまして、本日はその報告会ということになっています。
 闘いを担った戦士のみなさんに登場していただいて、いろいろ語っていただくんですが、ちょうど年末でもありますし、選挙結果について思ったこと考えたこと、とくに原発をめぐって、「なんで反原発派は全然勝利できなかったの?」という疑問とか、「やっぱりもう爆弾闘争しかないのか」と思い詰めてるとか、お集りのみなさんにもいろいろ云いたいこともありましょうから、そのへんも忌憚なく意見交換する時間も設けて、みなさんで盛り上がろうという趣旨の集まりなので、あまり緊張せずによろしくお願いします。まあ戦士の方々もそんなに立派な話をする人たちではありませんし(笑)、ありがたくお話を聞くというよりも、みんなで云いたいことを云い合った方が楽しい集まりになると思います。
 それでは、「原発推進派懲罰遠征3勇士」のみなさん、ご入場願います!

  (拍手)

中川 まずは3勇士のみなさんの自己紹介から……。

外山 外山恒一です。

中川 あの有名な!(笑)

外山 この会場(東京・高円寺「素人の乱」12号店)のある界隈に私にそっくりな人が出没して粗相を働き、あちこちの店に出入り禁止になっていて、「あれが外山か、やっぱりロクでもない奴だ」と噂が立っているようなんですが、それは私ではなくて、私がホンモノの外山恒一であります!(笑) で、隣に座っている、私が九州で主宰している恐ろしいファシズム結社「我々団」のメンバー2名と共に先日、「原発推進派懲罰遠征」というのをやりました。2人にもそれぞれ自己紹介をお願いしたいと思います。

東野 東野大地といいます。二〇〇九年に九州に移住しました。よろしくお願いします。

外山 もともとの出身は……。

東野 滋賀県です。(聴衆に右派が多いのに気づいて?)あ、移住したのは平成21年です。

中川 ファシストなんですか?

東野 はい。

  (会場から「おおーっ」のどよめき)

東野 それでは山本さん、お願いします。

山本 山本桜子と申します。平成19年に九州に移住しました。ダダイストです。ダダイズムというのは、ファシスト党の上部団体の思想です。ノブレス・オブリージュ、高貴なる者の義務ということで、ファシスト党に協力しています。

外山 まあこういう、「可哀想な子」です(笑)。東野大地と山本桜子、どっちも本名なんですよ。マンガか君らは、って感じの2人ですが(笑)、よろしくお願いします。で、何の話からすればいいんでしょう? だいたい今日お集まりのみなさんは、我々が今回どういう活動を展開したか、把握されてるんですかね?

中川 把握してない方っています?

  (1人挙手)

中川 ……まあ、おいおい分かりますよ(笑)。じゃあ、「原発推進派懲罰遠征」というのがどういう闘争だったかはほとんどのみなさんが把握しているってことで、ではそもそも今回の闘争はいつ頃から計画してたのかって話を聞かせてください。

外山 今回ぼくらは街宣車を使ってたでしょ。それは九州のとある原発推進派の右翼団体から格安で譲ってもらったんですが……。ちゃんと説明すると、まず熊本で知り合いが山本太郎(俳優。「3・11」以降、熱心な反原発活動を展開し話題となる)の講演会を企画したんです。その打ち上げの席に、もちろん山本太郎さんも参加して、講演会のお客さんたちと車座になって飲んでる場に突然、軍服というか迷彩服みたいなのを着た若者が現れて、「実は自分は右翼なんですけど原発には反対なんです。今日は他に予定が入っていたので講演会には行けなかったんですが、一言ご挨拶だけでもと思って、お邪魔した次第です」とか云うんですよ。じゃあこれから打ち上げに参加するのかなと思ったら、「これから仲間たちと高千穂に登るので、それでは」って(笑)敬礼して帰って行った。面白いなあって、後から熊本の友人経由でその青年に行き着いた。改めて会ってゆっくり話そうってことになって、実際に会ったんですけど、そしたら彼は昔、街宣車を自作して所有してた時期があって、でも今は他の右翼の人に譲ってしまった、と。ところがその譲った相手ももうあんまり使わなくなったんで、誰か買い取ってくれる人を探してるって話が出てきた。それでぼくらが手を挙げることになったんです。街宣車といっても、いかにも右翼っぽいイカツイのではなくて、ハイエースの上にスピーカーと看板設置台がついてるぐらいのものなんだけど、それを車も設備も全部込みで15万円で譲ってもらえるっていうから、こんないい話はないと思って。で、実際に譲り受けるためにその今の所有者である熊本の右翼の人に会いに行った。そしたら「譲るのはいいけど、一体何に使うんだね?」とか訊かれるわけですよ。ちょっと話してて分かったんだけど、どうも幸福の科学の信者なんですよ(笑)。だから原発推進派だってことは明らかじゃないですか。「原発推進派の候補者を追い回すために使います」って云うわけにはいかないなと思って、だけど嘘を云うのも気がひけるんで、ちょっと考えて、「悪い政治家をやっつけます」って答えたら、「そうか、頑張りなさい」って(笑)。街宣車の入手はそういう経緯だったんだけど、次の衆院総選挙で原発推進派の選挙カーを街宣車で追い回すってアイデア自体はもちろんそれより前からあって……。いつから云い出したんだっけ?

山本 春頃じゃなかった?

外山 街宣車を譲ってもらったのは6月で、だから少なくともそれより前だよね。アイデアはあったけど、じゃあ街宣車をどうしようって話をずっとしてて、今もぼくが乗ってる軽自動車があるんで、その屋根にスピーカーを設置しようかとか云ってたところに、さっきの右翼青年の登場があって、格安で街宣車が手に入る話になったので、それはもう買うしかないでしょ、と。近いうちに衆院解散、総選挙って話はもうかなり前からあったじゃないですか。「近いうち、近いうち」ってずっと云われ続けてて、だからぼくらとしても、早いとこ街宣車を準備しないとってずっと思ってた。6月に入手できたわけだから、結果的にはかなり余裕を持って間に合わせることができたんだけど。でも実際は都知事選と同日になったでしょ。都知事選は都知事選で、ぼくは立場上、何かやらないわけにはいかないじゃないですか(笑)。前回の二〇一一年の都知事選の時も、もちろん実際にはぼくは立候補してないんだけど、実際の都知事選の政見放送がテレビ放映される時間帯に合わせて、ぼくはぼくで政見放送ふうの演説動画を自作してユーチューブにアップした。本来なら次の都知事選は二〇一五年のはずなんで、都知事選のことなんかまったく念頭になく、いざ衆院解散・総選挙ってことになったら忙しくなるなってことだけ考えてた。そしたら11月だったか、石原がいきなり辞職して、来月にも都知事選って話になった。そもそもぼくは毎年11月はすごく忙しいんです。「どくんご」っていう野外テント芝居の劇団があって、ぼくは彼らの大ファンで、スタッフでもあって、11月は毎年、その全国ツアーが九州編にあたる時期で、ぼくもずっと劇団について九州各地をうろうろしている。なのに石原が急に都知事を辞めるとか云い出して、「ったくこのクソ忙しい時に迷惑な」と思ったけど、それはまあギリギリなんとか、「劇団どくんご」のツアーが終わってから都知事選の告示日まで10日間ぐらいありそうだったから、その間に新しい演説動画の一つぐらい頑張ればどうにか作って発表できるかなと……。

中川 実際の政治状況に具体的影響を与えるわけでもないのにあれこれ思い悩んでたんだ(笑)。

外山 全然関係ないのにね。困るんだよ、石原に勝手なことされると(笑)。その上さらに衆院解散・総選挙、なんてことになったらもうパニックだからやめてほしい、野田クンには任期いっぱい頑張ってほしいと思ってたんだけどね(笑)。実際、冬にはやらないだろうと思ってたの。冬に選挙やると雪国の人たちは大変だろうから、まあ11月いっぱい野田クンが耐えてくれれば、早くても春になって雪がなくなってからだろうって。実際ここ何十年かは真冬に総選挙やったことはないって聞いてたしね。そしたらいきなり解散でしょ。大変でしたよ、看板も大急ぎで作った。

山本 トルエン中毒に……。

外山 そうそう(笑)、油性塗料で一晩じゅう街宣車の看板を書いてたらトルエン中毒で頭がクラクラしてきた。

中川 外山恒一ってのは二〇〇七年の都知事選のイメージが強いから、ネットでの活動が中心だと思ってる人が多いんですよ。だけど今回は見事に、九州全土にわたる街頭闘争を展開されて、非常に高い評価を……狭い業界内で(笑)。

外山 全国の心ない反原発派の人たちからの熱い支持を(笑)。

中川 「今回は街頭で勝負したるんや」的な思いがあったんでしょうか?

外山 自分としては、そんなに特殊なことをやったつもりはないんだけど。

中川 ネットを使うとか、そういう情報戦のことを選挙の世界で一般に「空中戦」と云うんだけど、今回の外山先生はまさに「地上戦」をやったわけです。で、やっぱり地上戦をやる方が大変なんですよ。

外山 でもそっちの方が面白いですよ。

中川 もちろんそうなんだよ。しかしその地上戦の面白さをまたネットで実況中継して伝えるというのは非常に画期的だった。

外山 そうだね、ツイッターというツールがなかったら今回のもまた違う展開になってたかもしれないね。ツイッターがあったから、今どういう状況になってるのか、リアルタイムで刻々と報告できた。でもまあ、ぼくは昭和の人間なんで、ネットがない時代から活動してますからね。何かやれば、後でレポートを書いて「こういうことやりました」って報告するっていう、ネットがなかったとしても結局そうしてるだろうから、どっちにしてもやるにはやったと思いますけどね。

中川 今回は時々ユーストリームでの中継もやってたでしょ。ぼくもそれを見てたんだけど、ビンラディンが殺される時にオバマやヒラリーがそれを動画中継で見てたのもこういう感じだったんだなあって体験しましたよ(笑)。

外山 あ、街宣車がなかなかターゲットの選挙カーまで追いつかないんだよね(笑)。つまりぼくが街宣車で選挙カーを追っかけるんだけど、選挙カーのすぐ後ろにつけて街宣すると向こうの出してる「ナントカ候補をよろしく」って音をかき消しちゃって、法的に選挙妨害ってことになりかねないから、多少の距離を置いて追っかけることにしたんだよ。ところが距離を置いたらそれはそれで簡単に追尾を振り切られちゃう結果にもなるわけで、だったらもう1台、車が必要だと。さっきも云った、普段使ってるぼくの軽自動車を東野君に運転してもらって、そっちはもう相手の選挙カーの直後をひたすら追尾する。ぼくが振り切られたら、追尾を続けてる軽自動車から「今どこを走ってます」って連絡してもらう。もちろん運転しながら携帯で連絡してもらうのは、道交法違反でもあるけどそれ以上に東野君はもともと運転が危なっかしい人なんで、助手席に乗ってる山本桜子がぼくに電話をかける。ぼくの側がどのようにその電話を受けていたのかってのは……それは秘密なんですけど(笑)。でもとにかく、けっこう簡単に、頻繁に引き離されちゃうんですよ。選挙カーがいて、すぐ後ろに東野君の軽自動車があって、その後ろにさらに2、3台置いて、ぼくの街宣車が追っているっていう形が一番多かったから、赤信号とかですぐ引き離される。それでも福岡や熊本ならぼくも土地鑑があるんで、引き離されてもどうにかすぐ追いつけることが多いんですけど、宮崎とか大分とか、土地鑑のないところではほんとに大変なんですよ。いま中川さんが云ったのはそういう場面の話だと思うんだけど、ビデオカメラで記録をとったり、ユースト中継したりしてるのは軽自動車の山本桜子なんで、選挙カーを追いながら桜子が「今ここです」ってぼくに連絡してる場面が延々続いて、しかしなかなか外山街宣車が現れないっていう(笑)、そういうことがしょっちゅうあったはずなんですよね。

会場 あれオカシかったですよね、桜子さんが、「外山さん、そっちじゃないって、もう、バカ!」って云うシーン(笑)。

外山 じゃあそれをちょっと見てもらいましょうか。あれは大分だよね。(問題のシーンは1:10あたりから)

外山 ただこの時は選挙カーを見失ったんじゃないんですよね、逃げたんです(笑)。支援者が大量に集まってる屋外集会の会場に入ってしまいそうになって。

中川 理論的な部分についてもいろいろお伺いしたいんですが、どこまでが合法で何をやったらダメなのかってあたりは、どのように考えて計画を立てたんですか?

外山 何と云うかねえ……人間、都合の悪いことは目に入らないようになってるんですかね。事前に公職選挙法の該当する部分はちゃんと読んだんですよ。「選挙妨害」っていう項目がありますからね。「候補者の選挙運動を妨害してはならない」ってこともそのあたりにちゃんと書いてある。妨害すると「選挙の自由妨害」っていう罪に問われる。その条文にね、「暴力によって妨害してはならない」って書いてあったように記憶してたんだけど、実際には「暴力もしくは威力によって」って書いてあるの。だけどその「威力によって」って部分がなんかキレイに……目に入ってなかったんだよね。おぼろげな記憶でってことではなくて、今回の行動を計画するにあたって、ちゃんとしっかり読んだはずなんだけど、不思議だ(笑)。

中川 実際にはどの段階で警告を受けたんだっけ?

外山 順を追って話すと、まず……。いや、じゃあ最初に警察に取り囲まれた場面も見てもらいましょうか。(問題のシーンは7:10あたりから)

中川 ところで君たちが追いかけた原発推進派の候補者の方々は落選されたんですか?

山本 共産党の人は落ちた。

外山 我々の闘いによってね(笑)。

東野 さっきの動画で「この人は何やっても当選しそうだ」って云ってた大分の……。

外山 吉良州司。彼も落ちたね。まあつまり我々がいかに議会政治の情勢を分かってないかってことだよね(笑)。実際、追っかけてる時は「コイツ絶対落ちねえな」って思った。地盤、地盤、地盤ってとこばっかり回られて、道々から支援者らしき人々が握手を求めて湧いて出てきてたから、いかにも安定した候補者に見えた。

中川 (動画を見ながら)警察が出てきた。これは何日目?

外山 えーと、5日目かな。初日は熊本1区で松野頼久っていう、維新の会の候補者を追っかけて、2日目はさっきも出てきた大分1区の吉良って人ね。3日目が福岡2区の鬼木っていう自民党候補で、4日目に熊本2区で自民党の野田毅っていうベテラン議員を追っかけようとしたんだけど選挙カーを見つけられなくて、5日目に再挑戦して、朝から野田の選挙事務所を張って捕捉したんだ。そんでしばらく追っかけてたら、警察を呼ばれた。つまりそれまでも少なくとも熊本1区と福岡2区では選挙カーをさんざん追い回してるのね。だけど警察は出てこなかった。だから警察とまあ「接触」したのはこの5日目が最初。「接触」って微妙な云い方をしたのは、この時には「やめろ」とか、具体的な警告をされたわけじゃないのね。野田の選挙カーと、ぼくらの軽自動車と街宣車が停まっているところを警察に囲まれて、ちょっとした事情聴取みたいなことが終わってから、選挙カーだけを警察が先に発進させたの。ぼくらがそれを追って発進しようとするのを、警察が通せんぼして阻止する。熊本2区は恐ろしく広いんで、いったんそうやって引き離されちゃったら、もう野田カーを再発見することはほぼ不可能で、我々としてもそこで諦めざるをえない。で、その後で警察はぼくらに対して、「原発についてはいろいろ考え方もあるだろうから、君たちがこんなふうに活動するのもまあ分からんではないけど、もうちょっとやり方を考えて、ほどほどにしてくれないかなあ」って(笑)。だからこの時は、ぼくらの活動が違法だとか、これ以上やったら検挙するぞみたいな警告とかいうのは一切なかった。そういう警告を受けたのは鹿児島が最初なんだっけ?

東野 そうですね。

外山 鹿児島は、この熊本2区の翌日か。

東野 です。

外山 鹿児島でもまだ最初から警察の尾行がついてたわけじゃないよね?

東野 そうですね、ついてなかった。

外山 鹿児島1区で、山之内ナントカっていう維新の会の若い候補者を追っかけた。選挙カーには山之内本人は乗ってなくて、選挙スタッフだけだったんだけど、まず彼らが交番に駆け込み……。だけどまあ、日本の警察はそんなの相手にしないからね(笑)。「何か具体的被害があったの?」みたいな対応がおそらくあって、とくにないわけで、「それじゃあ警察は動けませんなあ」って、たぶん(笑)。「民事不介入と云ってね」みたいな。「自分で解決する努力をしなさいよ」って。きっとそういうやりとりがあって(笑)、やがて選挙スタッフが交番から出てきて、何もなかったようにまた選挙カーを走らせ始めた。ぼくらもそのまま1時間ぐらい追っかけ続けて、そしたら向こうは今度は交番ではなく警察署に駆け込んだ。ぼくはその段階でさっと逃げて、離れた場所で待機することにした。東野君もそうするだろうと思ってたんだ。警察署の近くの、選挙カーが見えるどこかちょっと離れた場所で監視を続けて、選挙カーがまた動き出したらぼくに連絡してくるだろうって。まさか東野君も警察署の敷地に入って、警察署の駐車場で選挙カーを見張ってるとは思わなかったからさ(笑)。後から聞いたら、東野君はそこが警察署だってことに気づいてなくて、それまでも選挙カーがどこかの建物の敷地に入って、中で支援者の集会がおこなわれるってことはあったから、この時もそういうことだと思ってたみたいなんだよね。商工会の建物かなんかだと勘違いしてたらしい。そしたら実は警察署で(笑)、やがて中から警察がいっぱい出てきて、軽自動車が取り囲まれた。ぼくの方はそんなことになってるとは思わないから、一本隣りの通りかなんかで東野君から「選挙カーがまた動き出しました」って連絡が入るのを待ってた。なのにいつまでたっても連絡がこないから、おかしいなと思って様子を見に行くと、そういうことになってた。

中川 どういう状況だったんですか?

東野 署の中で話を聞きたいから車から降りなさいってずっと云われてたんですけど、「話ならここでもできるじゃないですか」って降りるのを拒否してたんです。「自分が何をやったのか分かってるだろ」って云うんで、「よく分からないので説明してください」って。

中川 警察の敷地にいたんでしょ。「おまえはここで何をやってるんだ」って訊かれるでしょ、普通(笑)。

東野 訊かれましたね。でもそういう質問については無視して。

外山 「人を待ってるだけだ」(笑)

中川 自分から敷地内に入っておいて「おれに何の用だ」ってのは筋が通らないよ(笑)。

東野 「そんなふうにダンマリを決め込んでても意味ないぞ。話した方がラクだぞ」みたいなことも云われたんですけど、それもずっと無視してました。そしたら最後には警察の方が折れて……。

外山 いや、ウチの若いモンたちは場慣れしてないし、全体的にコミュ力にも問題があるから(笑)、警察と揉める状況になったらどうなるか心配で、事前に「警察に対応するな、そういう状況になったらぼくが全部対応するから、君たちは警察が何云ってきても無視しろ」とは云ってたんですよ。それはぼくの街宣車も一緒に取り囲まれる状況を想定して云ってて、東野君たちだけが取り囲まれる状況は想定してなかったんだけど、どうもその助言を頑なに守り続けていたみたいで(笑)。

東野 警察側の顔ぶれも次々に入れ替わって、車を持ち上げる……何て云うんですかね、ジャッキ? あれを積んだ警察車輛を両側につけられたり、そういう脅しみたいなこともあって、内心「ヤバいな」と思ってたんですが、最終的には向こうが折れたみたいで、ポスターの裏みたいな白い紙に「あなたがたの行為は軽犯罪法に抵触します」ってことが書かれたのを見せられた。「これは警告です 鹿児島県警」とか書いてあって。「具体的にどういう条文に触れるんですか」って訊いたら、「つきまといだ」って云われた(笑)。で、「分かりました。警告ですね。じゃあ行かせてください」って云ったんですけど行かせてもらえなくて、またゴチャゴチャやりとりがあったんですけど、最終的には免許証を提示して。「最後に電話番号も教えろ」って云うんで、電話番号も云いましたね。だけどその後も、「社会人か?」とかいろいろ訊いてくるから、「さっきので最後って云ったじゃないですか、もう行かせてくださいよ」って云うと、向こうも渋々それで行かせてくれました。

外山 その話を聞いて、「やっぱり公職選挙法違反じゃないんだ」と思いました(笑)。例の「威力」の文言にはその時点ではまだ気づいてなかったんで、警察としても困って「軽犯罪法の『つきまとい』」ってのを出してきたんだろうと。なかなか考えたな、と。で、その日は、それでも逮捕覚悟で選挙カーの追尾を続けるってこともちょっと考えたんです。どうせ軽犯罪法違反のショボい容疑だし。でも実は、鹿児島のこの山之内って候補に関しては、わざわざ選挙カーを追尾しなくても何の問題もないって事情があったんですね。というのも、選挙カーはあちこち走り回ってるんだけど、山之内本人は毎日、朝から晩まで繁華街のアーケードの入り口に立って演説してるってのを知ってたから、そっちに行きゃいいだけの話なんです(笑)。だから街宣車で夜8時まで、繁華街をぐるぐると百周ぐらい回りながら、山之内クンが見える範囲を通る時には「今あそこで演説してる山之内サンは原発推進派です!」と。そんなことされるよりは選挙カーを追尾されるのをガマンしてた方がよっぽど山之内クンとしても打撃は小さかったと思うんだけど(笑)。だから、まず5日目に熊本で初めて警察が出てきて「ほどほどにしてよ」と云われ、その翌日に今度は鹿児島で初めて法律的に「警告」を受けた。でもそれも公職選挙法による警告ではなくて、軽犯罪法違反である、と。

中川 しかしそれも実はこの20年ぐらいの大きな傾向ではありまして、つまり左翼の人も右翼の人も政治的な動機でさまざまの“コトを起こす”わけなんですが、なかなか「政治犯」にはしてもらえないんだよね。それが高度に発達した先進国家のやり方なんです。例えば法政大学の学生運動でもこの数年間に計百十八人の逮捕者を出しているんですが、法政の学生が大学の建物に入っただけなのに「建造物不法侵入」とかね(笑)。

外山 やっぱりそれは「政治犯」にはしたくない、と。今回も我々は「選挙制度の破壊」を意図してるわけなんだから、本来なら破防法とか適用されてしかるべきなんだが……(笑)。

中川 こっちは国家の根幹に手をかけようとしているのに、当の国家権力は軽犯罪法の「つきまとい」で処理したがるという。

外山 公職選挙法が出てきたのは何日目だっけ?

東野 鹿児島の次の日ですね。

外山 宮崎か。まあぼくらの方は単に「威力によって」って文言を見落としてただけなんだけど、警察としてもこれを一体どう取り締まっていいのか分からなかったんだろうね。だから熊本ではとりあえず物理的に追尾続行が不可能になるように取り計らっただけで、鹿児島では「軽犯罪法違反」で、宮崎でようやく公職選挙法が出てきて、「威力による選挙の自由妨害」であるという警告を受けた。しかしそれはそれでこっちとしても“つけ入るスキ”を与えてもらったようなもので、警察の登場すらなかった福岡や大分の例も含めて、各県警の対応がバラバラだったわけですよね。

中川 いわば定説がない。

外山 うん。つまり「県警によって判断の分かれるケースなのだ」ということで(笑)、一度警告を受けた県でまたやると今度は検挙ってことになるかもしれないけど、まだ警告を受けてない県では、警告を受けるまではとりあえず試しにやってみてもよい、と(笑)。やってみなきゃそもそも法に触れるのかどうかも分からないわけだから。熊本県警は法には触れないと判断したわけだしね。

中川 これもまた非常に重要な問題でありまして、若い方にはよく分からないかもしれませんが、昔は地球の半分が治外法権だったんです。ぼくはソ連の大学に行ってたわけだけど、ハバロフスクの空港に降り立った段階で、日本の警察はぼくにはまったく手を出すことができなくなる。そこからは東ドイツにだって中国にだってぼくは行けるわけですよ。

外山 国家権力が本当に恐れるのは他の国家権力だけなんですよね。

中川 そうなんです。アメリカのFBIだろうが日本の公安だろうが、国内では警察官は法律に守られてる。だけど日本の警察官であってもハワイに行けばただの民間人なんです。そういうことを国家権力のみなさんは非常に厭がる。国境とか、あるいは県境というものが今回のような闘争には非常に重要なファクターで……。

外山 まあ実際そういう作戦だったんですよ。逮捕されることを覚悟はしていたが、避けられるもんなら避けたいので、じゃあどうすれば避けられるかってことで考えた作戦の一つが、県を毎日変えるってことだったんです。選挙は12日間あって、九州は7県なんで、1県1度ずつぐらいカブるけれども、とにかく警察側が対応を整えないうちに他の県に行っちゃう、と。だから今回ぼくらは毎晩、20時までの活動を終えたらもうその足で、どこにも寄らずにとにかく県境を目指す。まるで昔の西部劇の、列車強盗が州境を目指す、「州境を越えればそこには自由が!」っていう(笑)、あのノリだったよね。

中川 まさにそれが、地上戦を展開する上で重要なヒントなんです。暴走族の皆さんも昔そうだったんですよ。東京で走ってて、白バイに追われた時はとにかく埼玉県や千葉県を目指す。そしたら向こうは県境で引くっていうんだよね。

外山 そうかそうか、それと同じだ。

中川 暴走族と一緒(笑)。だからこれから地上戦を計画する人たちには是非そこらへんの機微をね。警察にも限界があるのよ。万能でもなんでもない。まず法律に縛られるし、さらにはテリトリー争いというのもある。警視庁が千葉県で犯人を捕まえちゃいけない。千葉県警に怒られるんだ、「おれたちのシマで何やってんだ」って(笑)。

外山 もちろんそうやってまんまと次の県に到着しても、「何々県なう」とか呟かない(笑)。我々が何県で行動を開始するか、朝になってみないと分からないようにしてた。必ずしも隣県に移動するわけじゃなくて、フェイントで隣々県ぐらいまで一気に移動してみたり。着いたら朝までネット・カフェの駐車場かコイン・パーキングに街宣車を停めるんだけど、ブルーシートかぶせてたしね(笑)。まあ向こうが本気になってNシステムとか活用し始めたらムダなあがきなんだけど、いきなりそこまでの対応はしないでしょ。そういえば今回も、そのシーンそのものは撮影できなかったんだけど……宮崎で初めて公職選挙法違反で警告を受けて、その後どうしようかなって迷ったんだ。鹿児島と一緒で、逮捕覚悟で引き続き選挙カーを追い回すかどうか迷った。だけどすぐに抜け道を思いついてしまった(笑)。警察に取り囲まれて警告を受けて、どうしようかなと思いながらまた走り始めて、数十メートル行ったところで思いついたから、当然まだ警察が周りにいるのね。で、車を降りて、警察のところに行って、警察の車をトントンとノックして、「ちょっと訊きたいことがある」と。そしたら「まず質問を受け付けるかどうかを決めるから待て」とか云われたんだけど(笑)、それはまあいいとして、結局受け付けてはもらえた。こっちの質問は、「要するに選挙カーを追尾さえしなければ、街宣そのものは選挙期間中であってもべつに違法でもなんでもないんですよね」ってことで、「そうだ」って云うから、「だったらこの後はただ街を街宣して回ります」と。それは実は含みとしてはね、停められて警察の警告を受けたのはぼくの街宣車だけで、東野君の軽自動車は停められずにそのまま追尾を続けてた。だから相手の選挙カーがどこを走ってるのかはまだ分かってるわけ。つまりぼくは、選挙カーが今どこにいるか東野君に随時教えてもらいながら、その同じエリア、ほとんど通り一つズレたぐらいのところで、「今このあたりを走り回っている何々サンは原発推進派でーす!」って街宣して回れるわけだ(笑)。宮崎では少なくともその段階では警告を受けたのはぼくの街宣車だけで、東野君は何も警告されてないんだから、そういうことが可能になる。もちろんそこまで細かいことは云わずに、「もう選挙カーの追尾はやめて、選挙カーとは無関係にそのへんを街宣するんで」って云って、「それなら問題はない」ってことで警察もいなくなった。で、ここからがさっきの県境云々の話なんだけど、警察とそういうやりとりをして警察もいなくなった後で、ぼくはその場でその経緯をツイッターで報告するために携帯をいじってたのね。そしたら突然、窓をトントンとノックされた。見ると男が1人立ってる。窓を開けたら、「警察の者だけど」って云う。さっきまではいなかった人なんですよ。後から思えばそれが公安なんですよね。取り囲んで公選法違反の警告をしてきたのは、捜査二課の人たち。それはそうはっきりと身分を名乗ったし、そもそも選挙違反事案は二課の担当だしね。公安の人は「公安です」とは云わないし、ただ「警察の者だけど」って云うだけなんですけど、完全に二課とは別で動いてて、もしかしたら二課の人たちすら二課がぼくの車を取り囲んでいるそのさらに外側から実は公安が様子を見てたことを知らなかったかもしれない。で、妙に馴れ馴れしいんですよ。「どうすんの、これから」とか野次馬みたいな口調で(笑)。「困るんだよ、こんなことされちゃ」って苦笑いしながら、フレンドリーな感じで雑談めいた会話を仕掛けてくる。適当に相槌を打ちながら、「普通に街宣するだけなら問題ないって云われたんでそうしますよ」とか云ってると、最後に「やるんなら大分でやってよ、大分で」って云い残して消えた(笑)。

中川 そんなふうに警察にもテリトリー、管轄の問題があるっていう話なんですが、もう一つ重要なのが、さっきの動画にもバッチリ記録されてた、熊本の野田毅だっけ? 彼が思わず「渡辺喜美からカネもらってんのか」って口走ったという話。重要な点は二つあるんですが、一つにはそういうふうに考えるのが議会政治をやってる人たちにとっては常識なんですよ。政治は損得でやるものなのよ。もう一つは、思想犯と一般刑事犯の違いもそこにあるということです。警察白書を読めば分かるように、犯罪者の9割以上は泥棒です。まず犯罪の基本は泥棒で、みんなカネのために悪いことをする。カネのためでもなく悪いことをする人ってのは非常に特異な人で、それが思想犯。カネにもならないのに悪いことをするのが思想犯なんだということを、是非みなさんにもご理解いただきたい。で、例えば日本には中核派という過激派グループがあるんだけど、あれは思想犯ではありません。彼らは必ずカネになる運動しかやらないから。

外山 あんなの一般刑事犯だと(笑)。

中川 そう。

外山 知らない人もいるでしょうから説明しときますと、中川さんというのはレニングラード大学出身なんだけど、レニングラードにご留学される前は法政大学に通ってて、法政大は中核派の拠点なんですね。だからそのシマを守ってる中核派の活動家もいっぱいいるんだけど、それ以外にもとくにどこの党派にも組織されてない云わば個人的過激派の学生もいっぱいいて、ずっと中核派に締めつけられながら活動してたの。そこへ中川さんが入学して、反・中核派の学生たちの指導者となり、中核派の暴力支配と闘って、しかも勝利を収めてしまったという恐ろしい経緯があるんです。そういう人なんで、何かというと中核派の悪口がいっぱい出てきます(笑)。

中川 ともかく「カネになる」なんて話を度外視できるかどうか、これが非常に重要な問題です。

外山 さっきの県境云々の話に戻すと、まず一つには、実際やってみてそうだったように、ぼくらへの対応が県警によって分かれるだろうから、それを活動をしつこく継続する云いわけにできるんじゃないかという目算があった。それからやっぱり、警察としてもこれは有罪にできるという確証が持てないとなかなか手を出しづらいじゃないですか。脅しの意味で逮捕することもあるけど、原則としてはやっぱり有罪にすることを前提に逮捕の判断をするわけで。だから今回のような、有罪にできるかどうかよく分からないケースで、しかも警察ももう何日目かにもなればぼくのツイッターもチェックして、ぼくらが県を毎日変えてるってことも把握してるはずで、であればもう、どうせウチの県でやるのは今日1日だけだってことも向こうに伝わってるわけじゃないですか。こんな有罪にできるかどうかも分からないような案件で下手に逮捕してメンドくさいことになるよりは、たった1日の話なら適当にやり過ごして早いとこ他県に行ってもらえ、って警察も考えるんじゃないかなあと期待した。それからまあ、云ってみれば「広域犯罪」ですからね(笑)。それを摘発するには各県警が足並みを揃えて、連携を取らなきゃいけないはずなんで、そんな態勢をたった12日間ぐらいじゃ構築できねえだろうと思った。ざっとそういう諸々の思惑で、県を毎日変えるという作戦になった。

中川 今回の外山さんの悪知恵では、そこが一番素晴らしいと思いますね。警察は起訴まで持って行かなきゃ成績が上がらないし、検察に怒られるわけですよ。検事さんは起訴された案件を裁判で有罪にできなければ出世に響く。ニセ左翼である日本の左翼の人たちは警察官や検事のことを極悪人のようにイメージしてるけれども……。

外山 単なる役人だよね(笑)。

中川 うん、ただの公務員なんです。だからやっぱり「正義の実現」なんてことよりも、自分の出世の実現の方が大事なんです。そのへんの気持ちを分かってあげた上で彼らには対処しないと、つまんないところで損をする。やれる闘争もやれない気がしてしまう。

外山 だからこっちも、本当にヤバいなあと思ったら云いますよ、「今日だけですからぁ」って。「見てるでしょ、ツイッター」って(笑)。

中川 でも東京でやったら初日に逮捕されてるね。警視庁は警察庁と事実上同格の組織だから、多少強引なこともできる。

外山 やるなら地方ですよ(笑)。

会場 公選法違反の取り締まりというのは捜査二課の中の知能犯担当がやるんです。知能犯の扱いなんですね。

外山 だから警察と知能比べを……。

中川 今までにそういう事例がなかったんだろうなあ。

外山 鹿児島での「つきまとい」による警告にしてもね、警告されてもなお山之内クンの選挙カーを追いかけ続けたら今度は逮捕されるかもしれないけど、軽犯罪法のその条文を読むと、「相手が不安若しくは迷惑を覚えるようなやり方でつきまとう」ことが軽犯罪法違反とされてるんです。ということは、「相手によるじゃん」ということでもあるんですよね。

中川 親告罪ってこと?

外山 親告罪であるかどうかは知らないし、たぶん親告罪ではないと思うけど、「不安」とか「迷惑」とか被害者側の主観でしかないような文言が入ってることは事実なんで、警察としてもまず当事者に「不安ですか? 迷惑ですか?」って確認しないと立件のしようがないはずでしょ。

中川 被害届が必要ってこと?

外山 いや、被害届という形式まで踏む必要があるかどうかはともかく、口頭であれ何であれ、いったんは被害者側が「不安だ、迷惑だ」って「感じてる」ことを確認する段階が必要なはずだってこと。で、こっちとしては相手が「不安若しくは迷惑を覚える」かどうかは、実際やってみないと分からないことなんで、警察もいきなり逮捕するわけにはいかないだろう、まず「相手が不安だ、迷惑だと云ってますよ」とこっちに通告する手続きが必要で、それが「警告」ってことですよね。被害者側の主観の問題が条文に入ってる以上、それを確認して「相手が不安・迷惑と云ってるんで、これ以上やるなら摘発しますよ」と加害者側に伝える手続きが絶対に必要になる。いきなりの逮捕はありえない。結論としては、山之内クンの選挙カーを引き続き追尾すれば次は逮捕かもしれないけれども、同じ鹿児島1区の中でも別の候補者の選挙カーを追っかけるぶんには、その候補者は山之内クンと違って気の強い人かもしれないし(笑)、「不安若しくは迷惑を覚える」かどうか、実際に追っかけてみないと分かんないじゃないですか。警察が相手側にそれを確認してまた別の案件として警告を出してくるまでは追っかけることができる、つまり警告されるたびに相手を変えれば絶対に逮捕されることはあり得ないと思った。

中川 相手がイヤだと云えばやめるという。

外山 うん、非常に紳士的な(笑)。だってこっちはただ原発問題について啓発する活動をおこなってるだけで、まさか相手に「不安若しくは迷惑」を覚えさせるつもりなんか、ツユほどもないわけですから(笑)。

中川 だんだん人が信じられなくなってくる(笑)。

外山 まあ原発推進の候補者なんかいくらでもいるんで(笑)、こっちもいくらでもやれるってことです。「威力による選挙妨害」という公選法違反については被害者側の主観はあまり関係なくて警察の判断で警告できそうだから、さっきも話したように、少なくとも同一県内では繰り返せないけど。

会場 判例とかはどうなってるんですか?

外山 いやあ、そこまではちょっと……。だって事前に確認しとこうと思って、公選法の条文をしっかり読んだつもりで肝心の「威力によって」って文言を読み飛ばして、「よし、大丈夫だ!」とか云ってたぐらいだから(笑)。

会場 判例とはまた違いますが、公選法の通常の運用の仕方だと、選挙期間中に逮捕するってことはまずありえないんですけどね。選挙ポスターを破るとか、そういう露骨な選挙妨害なら別ですけど。

外山 でもそれは候補者や運動員の話でしょ。選挙期間中に候補者や運動員を、実際に有罪にできるかどうかも分からないケースで逮捕してたらそれこそ警察による選挙妨害になりかねない。だけどぼくらは選挙に出てるわけじゃないから、そこまで手厚い人権保障は期待できない。

会場 候補者にいたっては、警察が候補者に話しかけること自体が選挙の自由妨害と見なされるんで、何かあっても候補者じゃなく選対の事務局長とか、候補者以外のスタッフに警察から連絡が入る。ぼくも実は、ある公職選挙法違反の候補者の運動員をやっていたもので……。

外山 そのへんの話には詳しいよね。これまた知らない人のために説明しとくと、今コメントしてくれた彼は以前、福岡でぼくらが仲良くしてる「維新政党・新風」っていう恐ろしい極右組織のメンバーで(笑)、今は東京支部のメンバーなんですが、福岡にいた時に本山貴春君というやはり新風のメンバーが市議選に出て、彼がその選対本部長をやってたんです。で、その本山君が選挙違反で書類送検された(この件について『デルクイ02』に本山氏本人が寄稿)。というのは、みなさんはネット選挙はまだ解禁されてないと思ってるでしょうが、実はそんなことはないんです。選挙期間中にブログを更新してはいけないとか何とか、そういうのは単に総務省の見解というに過ぎなくて、司法判断はまだ一度も出てないんです。やってみなきゃ分からない問題で、だから本山君は市議選の期間中にブログを更新し続けたことはもちろん、ツイッターも続けてたし、なんとユースト生中継まで毎日やってた(笑)。それで選挙が終わってから書類送検されたんですが、警察が立件しただけではまだ有罪確定ではありませんからね。最終的には検察が不起訴の判断をして、本山君はお咎めナシになった。したがってこの本山君の事例一つで、ネット選挙はすでに解禁されたと考えて間違いないんです。本山君の件は報道もされてますから、マスコミも知らないはずはないのに、知らん振りをしている。

会場 さっきの話ですけど、警察は選挙事務所にも電話をかけてこない。事務所にかけたら候補者本人がいるかもしれないから、候補者が電話に出て「本人です」と云った時点で「選挙の自由妨害」になりかねないんで、ネット選挙に対する警告も、事務所じゃなくて選対本部長であるぼくの携帯にかかってくるんです(笑)。

外山 しかし関係ないけど、警察は東野君の名前をちゃんと把握してたよね。

東野 鹿児島で免許証を提示しましたから。

外山 うん。だから県警間の連携も一応、少しはあるんだよね。ぼくは少なくとも6日目の時点では東野君の名前をツイッターとかで出してないんだけど、鹿児島の次の日に宮崎で東野君が警察に囲まれた時は、警察は最初から東野君の名前を知ってた。ただたぶん書面で連絡を受けただけで、「ヒガシノ」なのに宮崎の警察は「トウノくん、トウノくん」って呼びかけてた(笑)。

東野 失礼な話だ。ぼくはトウノではないんで話しかけられても無視してたんです(笑)。

外山 ぼくが公選法違反で警告されて、その後も東野君はずっと追尾を続けてて、ぼくもそれに追いつこうと連絡取り合いながら追っかけてるうちに、さっきも云ったように宮崎では土地鑑がないから何時間も追いつけなくて、まだぼくが追いつかない段階で今度は東野君も警察に取り囲まれた。それは動画では記録が残ってないんだけど、静止画と音声だけ残ってるんで、これも後でちょっと見てもらいましょうか。

中川 桜子さんは今回は警察に囲まれなかったんですか?

山本 熊本で最初に取り囲まれた時だけですね。

外山 まだあんまりシビアじゃない時だね。ぼくの街宣車も一緒に囲まれて、ただ相手と引き離されただけで、「ほどほどにしてよ」って云われたっていう。

山本 次の日から他の用事で3日間、私が別行動してる間に鹿児島と宮崎でそういうことがあったらしい。

外山 ぼくがなかなか追いつけなくて、東野君が1人で選挙カーの追尾を続けてるんですね。

中川 知能犯なのに行動が行き当たりばったりだという……(笑)。

外山 さっき云ったように、音声だけなんですけどね。(8:19あたりから)

  (東野が宮崎で「軽犯罪法違反」の警告を受けている音声)
  (警察に「窓を開けなさい」と云われているのにひたすら無視している東野)
  (今回の行動を知っていたらしい通行人が撮って送ってくれた、東野の軽自動車が大量の警察車輛・警察官に取り囲まれている写真)

外山 こんな状況だったんですよ。これだけモノモノしいと、周りにいっぱい集まってる野次馬も、まさか容疑が「軽犯罪法違反」だとは思いも寄らないでしょうね(笑)。

中川 オウムの逃亡犯並みの扱いだよなあ(笑)。

会場 東野さんが外山さんの活動に参加し始めた頃には、こういう状況になった時に、こんなふうに警察に切り返せるような人だったんですか?

外山 切り返してないじゃないか(笑)。

会場 いや、でもたいして動じずにトボけたりとか……。

中川 トボけてる自覚はあったの?

東野 まず鹿児島で1人で取り囲まれた時には正直云ってビビってたんですけど、宮崎の時は思考停止してましたね(笑)。とりあえず黙ってようってことだけ考えて。

山本 この翌々日に私が再合流したら、東野が「なんで今回の行動が楽しいのか分かった。人と喋らなくていいからだ」とか云ってました(笑)。

外山 普通の運動は人と話してナンボだからね。

中川 性格の暗い人に向いた運動ですね(笑)。

東野 たぶんそうです。少なくともぼくには向いてましたね。

中川 それでもそこらへんの女性につきまとうより、悪い奴につきまとった方がよっぽど正義ですからね(笑)。みなさんもたぶんご存じの、赤軍派の塩見孝也さんという方がいますが、あの人には周囲の親しい人全員が迷惑をかけられています(笑)。奥さんも、友人の1人であるぼくも迷惑をかけられている。あの人はそういう人なんです。あの人は存在論的に迷惑な人なんです。「人に迷惑をかける」という星の下に生まれて来た人なんです。神様はそういう人もつくるんです。だから彼に「迷惑をかけるな」と云ってもしょうがない。塩見さんの迷惑は神の御心なんだから、文句を言ったらバチが当たります。問題は使い方なんです。われわれが考えなければいけないのは、塩見さんのもって生まれた迷惑をどう革命に活用するか、なんです。若い頃の塩見さんの迷惑は国家権力に向いていた。国家権力にさんざん迷惑をかけた。だから彼は革命家として称えられたんです。「友だちとしては迷惑な奴だけど、革命家としては偉大だ」ということになったんです。迷惑も相手が国家権力なら偉大な戦いになるんです。重要なのは相手なんです。今回の「つきまとい行為」というのも、キャバクラのオネエチャンか何かを追いかけ回してたらただの迷惑な人だけど、こんなふうに政治家の選挙カーを追い回してれば「ちょっと正義かな?」って気がしてくる。そこらへんも、みなさんが今後さまざまの闘いを組み立てる時に参考にしていただきたい。どんなに卑劣な行為でも、相手が悪い奴だったら許されるんです。闘争のコツでございます。ぼくが中核派と闘ってた時にも、ぼくは実は個人的な、プライベートな動機で闘ってたんだけど、法政の学生たちは、「あの極悪な中核派と闘ってるんだから中川は正義の人なんだ」と勝手に思ってくれる(笑)。人生ってそういうものです。

外山 山本桜子はさっきの熊本の、「渡辺喜美からカネもらってんのか」の名台詞が飛び出した日まではいたんだけど、その後3日間、所用で別行動してて、だから鹿児島と宮崎では東野君は1人で警察に取り囲まれてたのね。で、また8日目に合流するんだけど、そしたら東野君の性格が変わってたと証言しています(笑)。

山本 やたらと強気になってましたね。ドライビング・テクニックも上達してて。

外山 前は相当危なっかしかったもんね。

山本 今回の行動の前に一度、東野の運転で街宣車でドライブしたことがあるんですけど、とても怖かった。

外山 やっぱり一度警察に取り囲まれてみるっていう経験は重要だ(笑)。

中川 国家権力というのは抽象的なものではなく具体的なものなんだってことを、みなさんも早めに経験して理解した方がいいです。

外山 彼らがどこまでやれるのかってことも、だんだん分かってくるしね。

中川 そりゃあ警察は非常に強力な権限を持ってますよ。人を閉じ込めることができるんだから。だけどそれにも期限というものがあるし、閉じ込めてる間もメシは3食出してくれるし、拷問とかしないし(笑)。ビックリしたよ、劇画の世界とは違うなあって。

外山 まあ我々は多少、政治的背景のある人間だと思われてるから手荒にされないという側面もあるのかもしれないけどね。

中川 それはあるかも。公安事件だと、看守の人たちも下手なことしたらすぐ弁護士が来ると思ってるから。だからもしパクられた時は公安事件にしちゃった方が得です(笑)。

外山 実際は単なる一般刑事犯的な事件であったとしてもね。

中川 そういえば学生時代に私の知り合いで居酒屋でサラリーマンと喧嘩して公安事件になった奴がいましたね。相手のサラリーマンを殴る時に「てめえー、中核ー、殲滅だー」とか云ったら、公安刑事が飛んできたんだって、内ゲバ事件かと思って(笑)。

外山 その人は単に酔った勢いで「中核派め」とか云ってただけなんだ。

中川 うん。法政では「馬鹿野郎、コノ野郎」ぐらいの意味ですよ(笑)。

外山 計算ずくで云ってたわけでもなく……。

中川 法政の場合、人に喧嘩を売る時は「おまえ、中核だろう」と云うことになってる。そういう作法があるんです。学生手帳にも書いてあったと思う、20年以上も前のことでよく覚えてないけど(笑)。とにかく、ただの酔っぱらいの喧嘩でも相手が中核派だと公安事件になる。部署が変わるんですね。

外山 ぼくは前科三犯なんだけど、まあ3つとも表面的にはただの一般刑事犯だからね(笑)。表面的には、ですけど。で、最初に捕まった時もやがて拘置所に入れられて、まず独房の期間が長かったんだ。それはもちろん政治的背景のある人間だからっていうんではなくて、接見禁止がついてたからだろうけど、ともかく半年ぐらい独房暮らしだったから、読書三昧の日々にすっかり慣れちゃった。だけど接見禁止が切れてしばらくしたら雑居房に入れられそうになって、すごく困ったの。すっかり人とコミュニケーションとれなくなってる自覚があったから、すぐイジメに遭いそうだなと思って、なんとか独居房にとどまれる方法はないかと考えたんだよね。その時に思いついたのは、「こいつは政治犯なんだ」ということを分かりやすく拘置所当局に教えてあげればいいんだってことで、具体的には、獄中者組合とか監獄人権センターとか救援連絡センターとか、そういう団体の機関紙を片っ端から購読し始めたの(笑)。そういうのを購読するのは拘置所だけではなく仮に刑務所であっても阻止できない。で、当局としてはそういうのを購読してる人を雑居房に移したりすると、そういう知識がない他の囚人にもそれを見せられちゃうかもしれないでしょ。実際もし雑居房に移されたらぼくも見せるし。そしたら囚人にもこういう権利があるとか、全部バレちゃって都合が悪いから、そういう人はやっぱり独居房に置いとくんだ。「政治犯」というのはそういうふうに、いろんな使い道があります(笑)。

中川 そうそう、逮捕されるなら政治犯として逮捕されたほうが得です。政治犯として逮捕されるとヒドい目に遭うと思ってる人が多いようですが、現実は逆です。政治犯がヒドい目に遭ったのは、幸徳秋水とか大杉栄とか小林多喜二の時代の話です。今は政治犯のほうが優遇されます。なぜかというと、政治犯はすぐ弁護士を呼ぶから。警察がちょっとでも違法な取り調べをすると、政治犯はすぐ弁護士に云う。刑事さんたちはそれがイヤなんです。だから丁重に扱ってくれます。

外山 そういう細かい知恵について話し始めるとキリがないんだけど、とにかくまあ、一度は警察に取り囲まれてみるべしと。そうすれば彼らも単なる公務員、役人でしかないってことが実感できる。東野君もいっそ捕まった方がよかったかもね。

東野 そうですね。

外山 惜しいことをした(笑)。

中川 イッヒッヒ。

会場 とりあえず共産党の人が1人落選したという話しでしたが……。

外山 あ、成果?

会場 はい。

外山 成果ねえ。どうだったの? 東野君が調べてなかった?

東野 はい。調べてきました。

外山 さすが。ぼくは誰が落ちたのか受かったのか、全然興味ないのに(笑)。

東野 いや、ほくも大して興味はないんですけど、今日何を喋ったらいいんだろうってことで、話題作りのために一応調べたんです。初日に追っかけた維新の会の松野頼久って人は小選挙区では落ちて、比例復活してます。2日目の大分1区の吉良州司って人は、さっきも云ったように落ちました。

外山 いかにも強そうな候補だったのにね。

東野 比例でも復活してません。

外山 我々の攻撃の成果だ(笑)。結局10分ぐらいしか追い回さなかったけど、きっとそれがトドメに……(笑)。

東野 3日目の、接触事故を起こした福岡2区の鬼木誠……。

外山 さっき見てもらった動画にもバッチリ映ってたように、我々の追尾をかわそうとしたのか何なのかよく分からないけど、急に車線変更しようとして鬼木カーが無関係な車と接触(笑)。

東野 この人は当選してます。4日目は熊本2区の野田毅を追いかけるつもりだったんですが……。

外山 「渡辺喜美にカネもらってんのか」の人ね。

東野 選挙カーを見つけられなくて、ターゲットを熊本1区の、さっきの松野頼久とは別の、自民党の木原稔ってのに変更したんですが、その選挙カーも見当たらず、結局何もできませんでした。ちなみにその木原という人も当選してます。

外山 我々が少しでも追っかけていればなあ(笑)。

東野 5日目にリベンジで熊本2区の野田毅を追いかけました。この人も通ってます。6日目が鹿児島1区の山之内毅、維新の会の31歳ですが、小選挙区では落ちて比例当選です。この日は本来は自民党の保岡興治というのを追っかける予定だったんですが、その保岡って人が小選挙区で当選してます。

外山 そもそもは山之内を追っかけるつもりではなくて、保岡を狙ってた。法務大臣もやったベテラン議員で、しかも弁護士出身だという。これは追っかけなきゃと思ったんだけど、この日は桜子がいなかったんで追尾能力が不充分で、法律的にも手強そうな相手だし、どうせなら万全の態勢の時に追っかけようってことで、急遽もう1人の山之内を追っかけることにした。そしたらさっき云ったように2回も警察に駆け込まれて、敵対的な感じになっちゃったんで、これはもう山之内許さん、保岡なんかどうでもいいって(笑)、完全に開き直って山之内を徹底攻撃したわけです。まあ結局日数が足りなくて、後回しってことにした保岡は追っかけられなかったんだけど。

東野 7日目の宮崎1区の武井俊輔は当選です。

外山 これも自民党の人ですね。

東野 8日目が、この日もターゲットを発見できなかったんですが……。

外山 福岡の維新の会の人だっけ?

東野 いや、「この地域は我々が制圧した」とか云って……。

外山 あ、鹿児島3区だ。これは今日集まってるのは主に東京の人だろうからよく分からないと思うんだけど、地方では「何々1区」っていうのがたいてい県庁所在地つまり都市部で、人口の密集してる比較的狭いエリアなんです。だから街を走り回っていれば敵の選挙カーとも比較的遭遇しやすい。だけど九州では福岡を除いては、2区、3区……っていうのはもう、何と云うか、50キロ四方とか、もっと広いかもしれないぐらいの範囲で一つの選挙区になってる。それぐらいの広範囲を4陣営ぐらいの選挙カーが走り回ってる。そんなもん探せるかって話なんですよ。で、我々はそもそも原発に反対してこういう活動をやってるんだってことをフト思い出して(笑)、原発立地自治体を含む選挙区にも行っとかなきゃマズいだろうと、川内原発のある鹿児島3区に行った。だけど今云ったように選挙カーなんか発見できないのは最初から明らかで、だってしかも4人か5人が立候補してると云っても追尾対象なのはここでは自民と維新の2人だけだし、ますます発見できるわけないですよ。じゃあどうしようってことで、もう「この地域は我々が制圧した」と宣言することにした。広い鹿児島3区の中でも、原発立地自治体である薩摩川内市の区域ね。他のところは知らんが少なくとも薩摩川内市の範囲内は我々反原発ファシストが制圧したんで、今日1日、原発推進派の選挙カーは入ってくんな、もし入ってきたら攻撃して排除する、という宣言をツイッターで出した。でまあ、実際には温泉に入ったりしてたんですけど(笑)。ともかく原発現地でも我々は闘ったんだぞというアリバイは作っとく必要があると思ったんだけど、一方で選挙カーなんか発見できるわけないという現実があって、さらにこの日まで桜子がいなくて態勢も不充分で……。どうせ大したことはできないんで、うまいことサボる口実を考えたわけです(笑)。

東野 だけど警察の尾行が……。

外山 そうだそうだ。それまでも鹿児島とかで警察に尾行されたけど、それはすでに選挙カーを追っかけ始めてからだからね。この日は要するに何にもしてないのに、温泉から上がってとりあえず「市内パトロールだ」とか云ってただ走り始めたら、いきなり警察の尾行が2台ついてたの。何ヶ所かどうでもいい交差点で曲がってみたりして確かめたら、ずっとついて来るんで、これはもう尾行に間違いないと。東野とは別行動で、東野は東野で別にパトロールしてもらってたんで、この話は映像に残ってないんだけど、しばらく尾行されてるうちに、ふと閃いたのね、悪知恵が(笑)。尾行されつつ、ブルーハーツとかかけながら、地元で一番大きい、川内高校ってとこに警察を誘導したの。で、グラウンドで生徒たちが部活の練習とかしてる周りを走りながら、それまで音楽だけかけてたんだけど、急にマイクを持って、「原発問題を訴えています。そしたら警察に尾行されています。この車の後ろにビッタリついてるのは警察の尾行です。原発問題を訴えてるだけでこんな目に遭う、恐ろしい世の中です」って始めたら、もうすごい勢いで警察は2台とも逃げて行った(笑)。あれは痛快だった。それでそれ以降は尾行されるたんびにそれをやった。まあ、毎度毎度そんなにうまいこと逃げてくれないけど、この時だけは一瞬でいなくなった。

中川 警察もやっぱりイヤなんだなあ。

外山 きっと何か後ろめたいことがあるんじゃない?(笑) でも実際こっちは選挙カーを発見できずに無為にうろうろしてる時間も結構長いわけで、そういう時に尾行でもついてくれれば、そうやってネタにして、何かやってる感じにできるんだから、非常に助かるんだ。

中川 警察に追われるってのは、それなりにスゴいことだもんね(笑)。

外山 ターゲットの選挙カーもいないところで、単に「原発問題を争点にしましょう」って街宣してたって、そこらへんの社民(社会民主主義。あくまで資本主義の枠内で福祉的手段などで弊害を是正しようという立場で、資本主義自体の打倒を目指す過激派からは軽蔑される)みたいじゃないですか。こっちはそういうことをやりたいわけじゃないからさ(笑)。もっとドラマチックな感じにしたいわけだから(笑)。だからもう、尾行がついたらこりゃあシメたものだってんで、ことさらに街なかの、できるだけ人が多いところに急いで移動して、「警察に尾行されながら原発問題を訴えています!」って街宣するようにした。

中川 それは尾行はされてるけど逮捕されるようなことじゃないし、願ったり叶ったりだなあ。

外山 何のデメリットもない(笑)。

中川 ただウキウキするだけ(笑)。

外山 川内の最初のそれは撮れてないんだけど、別の日に撮れてるんで、それもちょっと見てもらいましょうか。(0:45あたりから)

中川 尾行されるのが嬉しくてしょうがないって感じだね(笑)。

外山 これは楽しかった。だけど最終日の福岡がねえ……、これが非常に辛かった。というのも、最終日はとにかくターゲットを決めないことにしたんだよ。ラストだから派手にやりたいと。福岡市内であれば、1区、2区、3区がそれぞれ都市部にカブってるのね。博多駅周辺は1区で、最大の繁華街の天神が2区、副都心的な西新ってところが3区。だから東西5キロぐらいの都市部をうろうろしてれば、3つの選挙区の合計十数人の候補者がそれぞれ選挙カーを走らせてるはずで、単に自民党と維新の会の候補者だけでも5、6人いるわけだし、その上さらに福岡2区の稲富ってのも民主党内の原発推進派であることが分かってたし、1区の民主党候補は有名な松本龍で、推進派かどうかハッキリしないけど突っ込みどころはあるでしょ。さらには我々はファシストなんで、共産党も攻撃できる(笑)。後で云うかもしれないけど、“ラス2”の佐賀3区で攻撃した以外は一応、共産党を攻撃するのは控えてたの。だけど最終日はもう、最後だしやりたいことを徹底的にやろうということで、共産党にも容赦しないことにした。「このインチキ脱原発め、3・11以前はずっと推進派だったくせに、今さら信用できるかコノヤロー」って(笑)。で、とにかく朝から晩まで福岡都市圏をウロウロして、そうすればもうヨリドリミドリで次々に推進派の選挙カーに遭遇するに違いないから、見つけ次第に襲いかかる“ファシストの狂犬”路線で有終の美を飾ろうと(笑)。だけどどういうわけか、全然遭遇しないんだよ。維新の奴に2回ほど遭遇したんだけど、追いかけ始めるなり事務所に逃げ帰っちゃうし、追い回してる姿を通行人に見せびらかすってふうに全然ならない。あとは遭遇したのは幸福実現党だけ。幸福実現党にだけは何回も遭遇するの(笑)。だけどあいつらを攻撃しても意味ないからさ。こっちまで同じレベルになり下がるだけだし、それに「原発推進派ってのはこういう連中です」って、幸福実現党の存在自体が逆に自動的に推進派へのネガティブ・キャンペーンになってるぐらいなんで(笑)、放置するのが一番いい。とにかくほとんど誰も追い回せなくて、それでもせめて警察の尾行でもついてりゃさ、どうにかカッコがつくじゃん。だけど……たぶんバレちゃったんだね。全然尾行してくんないの(笑)。ほんとに最終日は虚しかったよ。ただひたすらさあ、福岡市内を「原発問題を争点に」ってアナウンスして回っただけなんだもん、朝から晩まで、マジメに。

中川 警察にも構ってもらえなかったんだ。

外山 ある種の「かまってちゃん」にすぎないってことが、ついにバレてしまった(笑)。さすが福岡県警、九州の他の田舎警察とはひと味違う。

山本 最終日じゃないんだけど、大分で、先頭に推進派の選挙カーがいて、その後ろにぼくらの軽自動車がいて、その後ろに外山さんの街宣車がいて、最後に警察の尾行が2台ぐらいついてるって状況になってた。だけどそのうち外山さんが引き離されて、ぼくらは推進派を追っかけ続けてるんだけど、それとは別に外山さんがただ警察に尾行されてる状態になって、やがて外山さんから、どうもぼくらに追いつけそうにないから、このまま警察を引き連れて市街地に行く、「尾行されてます」パフォーマンスをやるから、君らも選挙カー追尾を中止してこっちに合流してその様子を撮影してくれって連絡がきた。それで市街地に行ってみると、今度は先頭に外山さんの街宣車、その後ろに警察、最後尾にぼくらの軽自動車っていう並びになって、市街地の同じルートをぐるぐる回り始めた。だから何とか、だんだん警察、軽自動車、街宣車って並びに移行させられないかなあって。

中川 意味不明な……(笑)。

外山 ダダイズムだねえ(笑)。

山本 でもそこまでいかないうちに警察が尾行を中止しちゃった。

外山 これ以上尾行しても、こいつら「尾行されてます」パフォーマンスをずっと続けるだけだなって感じで、警察は尾行をやめたみたいなんだけど、でもそのすぐ直後なんだよね、いったん見失ってた敵の選挙カーが突然また現れた。「あれを追え!」って(笑)、軽自動車による尾行を再開して、つまりもう警察の尾行はない状態なの。ところがぼくの街宣車が先頭で、警察がついてこないままぼくはちょっと先まで走っちゃってて、警察が尾行をやめてどこかに消えちゃったその後ろに軽自動車がついてて、そこに敵の選挙カーが再び現れたんで軽自動車は今度は警察じゃなくてそっちを追尾し始めるんだけど、ぼくはまたちょっと離れたところからUターンしてそれを追っかけなきゃいけないわけでしょ。これがまたなかなか追いつけなくて。「今ここです」って連絡を受け続けながら、どうも彼らが通った1、2分後をずっとトレースし続けてはいるみたいなんで、「たった今ココを通った何々サンは原発推進派です!」って街宣しながら追っかけたんだけど、追いついたのは結局20時ギリギリで、向こうが街宣を終えてコンビニの駐車場に停まってる周りを最後に「そこに停まってる何々さんは原発推進派です」って云いながら2周ぐらいしたんで、最後の1時間近くずっと何されてたかを相手に悟らせることはできたと思う。まあ成功か失敗かは微妙だけど、それでも1時間近く“トレース街宣”はやったわけで、警察としてはそれもさせたくなかったはずではあろうから、尾行中止の判断をした刑事はきっと後で顛末が分かってから大目玉を食らっただろうなと(笑)。そういう意味では大勝利だったのかな。

中川 まあ、逮捕されるのは困るけど、警察にまったく相手にされないのも困るっていう(笑)、そのサジ加減だな。

外山 警察としても放っとくわけにはいかないようなことをやらなきゃいけない。

中川 だけどなかなか捕まえるわけにもいかないっていうギリギリの線を狙う。

外山 ぼくらが追っかけた推進派候補のほとんどは、さっき東野君が報告したように結局落ちなかったというか、そもそも最初からこの程度のことで落とせるとは思ってもいないんだけど、まあ良かったよ。ほんとにぼくらのせいで落ちたりしたら、後で恨まれるからさ(笑)。

東野 人にあんまり嫌われたくない。

外山 みんなに愛されるファシストでありたいよ。

中川 イヤがらせはやるんだけど、その結果として嫌われたくない……面倒な人たちだな(笑)。

会場 だけど可能性は見せてくれましたよね。

外山 うん。マジメな話をすると、それが今回の闘争の本当の獲得目標だから。こういうことをやっても捕まったりしないんだって証明してみせて、次の選挙の時にでも、全国各地の原発反対派が同じようなことをやってくれること。ぼくらが単独で1選挙区につき1日ずつ推進派候補を追い回したって、そんなことで選挙結果が左右されたりしませんよ。だけどこれが全国各地で、選挙の1ヶ月ぐらい前から大勢の人によって徹底的におこなわれたら、結果を左右することもできるかもしれない。我々は選挙そのものに否定的ではあるんだけど、何万歩も譲って、こと選挙の話に限ったって、フツーに選挙運動をやることだけが社会変革の手段ではない。フツーに選挙運動をやる以外のやり方、ゲリラ的な、街頭闘争のような手段で選挙に介入することだって可能なんだと、全国のマジメすぎる反原発派の人たちに提示してみせたかった。たしかにぼくらは何度も警察に警告されてますし、やっぱりこのやり方は無理なんだと誤解した人も多いとは思うんだけど、ぼくらが警告されたのは、相手の選挙カーを追っかけてるからだからね(笑)。追っかけさえしなければ、つまり原発推進派の選挙カーの動向とは無関係に、ただ街宣して回ることは選挙期間中であっても完全に合法なんです。それは宮崎で公選法違反で警告された時に警察に確認したとおり。実際にやってみるまでもなく我々にはそれは最初から分かってたことなんだけど、でもそれじゃ今回みたいに盛り上がらないでしょ。盛り上がらないと注目されないし、注目されないと「こんなやり方があったのか!」と全国の反原発派の人たちにも気づいてもらえない。だからあえて逮捕のリスクを負ってまで、敵の選挙カーを追い回すっていう云わば“余計なアクセント”をつけて、わざわざ面白くすることで注目を集めたの。ほんとは単に街宣して回るだけでいいんです。3・11以来の反原発運動でいわゆる“サウンド・デモ”も全国各地で盛んにおこなわれたし、ということは各地にいざとなれば“サウンド・カー”を用意できる態勢はあるわけでしょ。ない地域でも、普通の車の屋根にスピーカーを設置するぐらい10万もあればできますよ。要はヤル気の問題。推進派の選挙カーを追っかけたりせず、ただ街宣するだけなら完全に合法だと今回ぼくらが充分以上に証明したんだから、本気で原発を止めたい、原発推進派の議員を1人でも落としたいなら、次の選挙で全国各地で徹底的にやればいい。もちろん注意しなければいけない点はいくつかありますよ。例えば「何々サンを落選させましょう」って街宣は、たぶん違法です。「何々サンは原発推進派です、何々党は原発推進派です」って街宣なら、単なる“事実の指摘”であって、選挙とは無関係な単なる政治的な情宣活動と云い張ることができるので、摘発のしようがありません。「何々サンに投票しましょう」とか「何々サンを落選させましょう」とか、選挙と直接に関係するようなフレーズさえ使わなければいいんです。繰り返しになりますが、それを分かった上であえて特定の候補者の選挙カーを追い回すなんていう“余計なこと”をしたのは、ただ注目を集めて話題にしてもらうためで、本来は必要ないことです。とりあえずエンタテインメントとして面白くなければ、みなさんも今日わざわざぼくらの話を聞きに集まってくれたりしないでしょ(笑)。

中川 やっぱりどうせやるなら具体的に相手にイヤがられて、「お巡りさん助けて」って云わせたいしね(笑)。

外山 ただ九州の片田舎で選挙期間中に完全に合法的な反原発の街宣をやっても、ぼくら自身も面白くないし、ハタから見てもたぶんあんまり面白くないんで、話題にもならず、結果として「こんなやり方があったのか!」と気づいてももらえない。どうも選挙期間中にそういうことをやってはいけないと思い込んでる人が多くて、だけどそんなはずはないし、「そんなはずはない、やれるんだ」ってことを知らしめたかったんです。ぼくら自身はもともと選挙に興味もないし、誰が落ちようが通ろうがどうでもいい。それこそ野田毅がカネくれるって云うんなら今度は渡辺喜美を追い回したっていいぐらいなんだけど(笑)、ぼくらが興味あるのは闘争の“方法”なんだよね。どうも一連の反原発運動を見ていると、闘争の方法、スタイルのアイデアが貧困である気がする。もっといろんなやり方があるはずだっていう、その一つを具体的に提示して見せたかったっていうことだな。

中川 それは非常に素晴らしいことだと思います。運動のパターンが決まりきっちゃってるところはあるよね。それはやっぱり法律とか警察とかに対する具体的な経験・研究のないところでみんな発想してるからだよ。

外山 さっきの「ネット選挙は実はとっくに解禁されてる」って話もそうなんだけど、みんな何となく「こういうことはやっちゃいけないことになってる気がする」ってだけの話だったりするんだよね。今回だって事前にいろんな人に「今度こういうことやるつもりなんだ」って話したんですよ。でもみんな、そんなことしたら絶対捕まるからやめとけって云うんだよね。「大丈夫でしょう」って人は1人もいなかった。例えば右翼方面の人たちだと、実際ぼくらが今回やったようなことは法的に不可能だったりするのは確かなんですよ。というのは、彼らの多くは選管に政治団体として届け出をしてるから。それは届け出れば街宣車が無税になるからとか聞いてるけど、選管に政治団体として登録しちゃうと選挙期間中に街宣車を走らせることはできなくなるんです。選管に登録さえしてなきゃその公選法の規定は関係なくなるのに、なんか右翼業界の常識みたいな感じで多くの団体が登録しちゃってるから、選挙期間中は実際ほとんどの右翼団体は街宣できない。そうすると「選挙期間中の街宣は禁止」っていうのが本末転倒的に右翼シーンで当たり前みたいに思われるようになって、ぼくらが今回みたいなアイデアを口にしても、「そんなこと絶対ムリ、常識だよ」って反応しか返ってこない。あんまりあちこちで絶対ムリって云われるんで、「それはあなたのトコが選管に政治団体登録してるからでしょ?」とぼくは分かってるはずなんだけど、ちょっと自信がなくなってきたぐらいそういう反応ばっかりだった。

中川 とにかく警告されるまでは思いついたことを何だってやっちゃえばいいんですよ。警告ナシにいきなり逮捕されるのは中核派だけですから(笑)。あるいは麹町署だけだから。麹町署は、逮捕する時に何の罪状だか云いもしないからね。弁護士が接見に行って、やっと何の容疑で逮捕したか教えてくれる。しかも実際に起訴する時はそれとも違う罪状になってるの(笑)。だけどそういうのは麹町署とか、ごく一部でしか許されないことだから。普通の警察では、ちゃんとビデオとか撮って、証拠を集めて、「これは何々の罪に問えるな」ってことをしっかり検討して、まず警告。

外山 とりあえず何か思いついたら麹町署の管内以外でやれと(笑)。今回ぼくらは反原発運動の新しい戦術を提起したつもりだし、実際に全国のココロナイ反原発派の人たちからたくさんの応援メッセージをいただいたりしたんですが、なにも原発問題に限らずやれることだよね、今回のは。左翼界隈には元々ぼくを嫌ってる人もたくさんいて、そういう人が呟いてたんだと思うけど、意外と鋭いこと云ってる人がいた。彼だか彼女だかは「今回の外山の行動を無邪気に賞賛すべきではない」と云うんだ。今回は外山がたまたま反原発を掲げてるから素晴らしいと感じるのも分かるけど、この戦術は原発以外の運動にもいくらでも応用できるぞ、と。もし在特会みたいなのが今回の外山の行動にヒントを得て、選挙期間中に民主党や社民党や共産党の選挙カーを追い回して「コイツは国賊だ、チョーセンの手先だ」とかやりだしたらどうすんだ(笑)、外山も実はそのことに気づいてるはずだとか云ってて、なかなか鋭いなと思ったんです。そこまではっきり意識してたわけじゃないけど、何にでも応用できるよな、在特会みたいなのにマネされたらイヤだな、ぐらいには確かに薄々考えてはいたんで(笑)。もちろんぼくとしてはそんなことはどうでもいいんです、はっきり云って。すべてがどうでもいいというニヒリズムの過激派なんで、在特会が今回のぼくらの手法を「悪用」してヒドい運動を展開してくれたって究極的にはどうでもいい。いやむしろそうなることを望んですらいますよ。反原発派も、在特会も、ナントカ派もカントカ派も、あらゆる政治勢力が議会外で大暴れして、議会政治などというくだらないものを徹底的に撹乱してほしい。どんな思想信条を持った奴でも、選挙期間中に、立候補もしてないくせに、それぞれの立場でガンガンやればいいと思ってます。今日も「維新政党・新風」という恐ろしい極右政党の人が来てくれてますが(笑)、新風なんて全国に支部があって、それぞれ街宣車も持ってるわけでしょ。過去に何回も国政選にうって出てるけど、どうせ通りゃしないんだからさ(笑)。むしろ普通の意味での選挙は諦めて、各地の国賊政治家どもを選挙のたびに街宣車で徹底的にディスって回ればいいじゃん。将来的にはまた選挙に出るにしても、そういう形でまずは存在感を示す戦略だってありうるわけだよ。とにかくそうやって、右でも左でもいいから、選挙に出てもいない人たちが選挙を口実に騒ぎをまき散らすって状況が生まれた方が絶対面白いって。選挙に期待したって、どうせ今回、反原発を掲げる未来の党だの社民党だのをいくら応援したってさ、通りゃしないんだから(笑)。しかも仮に今回立候補してた反原発派、共産党はどうせ通らないとして、民主党と社民党と未来の党の候補者のうち明確に反原発を掲げてる人が全員通ったとしても百人もいなくて、衆議院五百人の中じゃ圧倒的に少数派でしょ。そんなもん最初から完全に負けてるじゃん。フツーに選挙に期待したって、そもそもまったくダメだってことは開票を待つまでもなく分かりきってた。

中川 そうなんですよ。単に立候補者の数の問題に限っても、純粋に政権与党になれる可能性を持ってるのは自民党と共産党だけなんです。ここがまず第一に議会制民主主義の茶番なんです。他の政党がいくら「政権を取ったらこういうことを実現します」って云ったって、そもそも数として単独では政権与党にはなれないんだから。だから自民党と共産党以外の、そういう公約めいたものは全部ウソなんだってことをみなさん理解しなきゃダメですよ。まあ今回は民主党も全員通れば過半数を制するだけの候補者を出してるかもしれませんけどね、少なくとも社民党や維新の会や維新の会や未来の党はそうじゃないんですから。そこは間違えちゃいけない。

外山 あるいは今回の都知事選で、心ある人たちは宇都宮健児サンを一所懸命、応援してたみたいですけどね。ぼくだってまあ、宇都宮サンってのはなかなか立派な人みたいだなとは思いますよ。だけど通るわけないでしょ、そんなもん。ぼくが都知事選に出た時も、心ない人たちはぼくを応援してくれましたが、心ある人たちは元宮城県知事の浅野ナントカって奴を応援してましたよね。あの時ですら石原が通るに決まってる、浅野なんか通るわけないってことは最初から分かってたじゃないですか。浅野ですら通らないのに、宇都宮健児サンが通るなんて尚更ムリだって、誰にでも分かりますよ。なんでそういう愚劣な期待を繰り返すのか。当選させたい人をどうせ当選させられないんなら、もう選挙に期待することはやめて、せめて何かスカッとすることを考えて実行すればいいじゃないですか。山本夜羽音なんか典型的だけど、普段はフザケたこと云ってるサブカルっぽい人たちも、なぜか選挙になると急にマジメになっちゃうんだ。

中川 嫌われたくなくなっちゃうんだよね。これまで内ゲバとかやって散々嫌われてきた人たちまでそうなっちゃう。しかし今回の外山さんたちのように、だからといって選挙に出ずにただ茶化して回るってのも邪道じゃないかと思う人もいると思うんだけど、どうですか?

会場 今回の「懲罰遠征」の最大の目的は何なのかってことが、やっぱりまだよく分からないんですよ。例えば原発再稼動みたいなことを本気で止めたいのか、それとも運動の新しい形を提示することが最大の目的なのか、あるいはファシスト党の宣伝が目的なのか、どうもよく分からない。それからやっぱり過激なので、普通の市民運動を穏やかにやりたい人たちからは反感を買うだろうし、そういう人たちは、むしろ反原発派はこういう過激な連中だと却ってネガキャンになってしまうじゃないかと批判してくると思うんですが、それに対してはどう考えてるんでしょうか。

外山 まず前提として、ぼくは原発反対であるし、一刻も早く原発を止めたいと思っていることは確かなんですけど、今回の選挙に関してはさっきから云うように最初から反原発派は負けると分かりきってるわけですよ。今回の選挙で反原発の結論なんか最初から出るわけがない。だから仮にマジメに原発全廃を目指すにしても、そんな選挙に期待してあれこれやるより、いずれ政権を取って必ず原発を全廃する我々ファシスト党の宣伝になることをやった方がいいに決まってるんです。さらに、ぼくらの運動は確かに過激ではあるんですが、単に過激なだけではなくて、「穏やかにやりたい」という人たちすらつい笑ってしまうような、エンタテインメントになってると思うんです。そうでないとぼくら自身も楽しめないし。ぼくらはそもそも選挙に何の期待もしてないわけだし、世間が選挙がどうこう騒いでるのを単に無視して他にやるべきことをやればいいんですが、せっかく何か思いついて、それが「この人たち、我々はファシストだとか恐ろしいこと云ってるけど、案外いいんじゃない?」(笑)みたいな反応を期待できるようなものであれば、それをやらない手はありませんよ。選挙などという元々バカバカしい制度を、そういうふうに利用できるんなら利用するに越したことはない。我々にとって選挙なんてしょせんその程度のものにすぎません。

中川 一九四五年にアメリカに制圧されて以来、民主主義がすべてなんだと御指導されて、何事も選挙で決着をつけなければいけないと、みんな刷り込まれてるわけです。それが60年安保闘争や全共闘運動で、選挙だけで決着をつけちゃいかんと云って闘ったはずなんだけど、とくにこの10年ぐらいは、それでもやっぱり選挙で決めるしかないんじゃないかという風潮が強まって、それに異議を唱える人が必要なんですよ。政治学の普通の話としてよく云われるのが、一番いいのは偉い王様による統治で、次にいいのは優秀な貴族の人たちによる統治、3番目、4番目といろいろあって、民主主義というのは6番目にいい制度でしかないと。たいして良くもないけど極端な間違いは起きにくい、ぐらいのメリットしかない。とくに「3・11」以降、そんな民主主義でいいんだろうかと薄々思ってる人はいっぱいいるとぼくは思うんだけど、そういう疑問はなかなか形にならない。今回みたいな、民主主義とか選挙を相対化するような実践の試みは必要なんですよ。

外山 今回ぼくらがやったようなことは、はっきり云って何ら実効性はないんです。吉良州司ぐらいしか落選させられてない(笑)。でもそれはぼくらが3人だけで、車1台だけでやったからであって、全国の反原発派がこれをもっと大々的にやればだいぶ違いますよ。けっこう大変なことになると思う。「やろうと思えばこれぐらいのことはやれるのに、なんでやらないの?」っていう問題提起ではあるんだ。原発に反対してる人たちが、みんなマジメであるがゆえのことだろうけど、選挙になると急に既成の選挙運動のイメージに縛られて、それに則っちゃうんだよね。これまで革新勢力がさんざんやり尽くしたような無意味な戦術に囲い込まれていっちゃう。ぼくらは今回、たぶん逮捕されるだろうと思いつつ、まあそれも実際やってみなきゃ分かんないし、例えば「警察がこういうふうに云ってきたらこうしよう」とか、事前には全然考えてなかったんです。最初からそういう緻密な想定をしちゃうと逆にそれに縛られちゃって臨機応変な対応ができなくなるんで、むしろ何も考えずにやってしまえと。ヤバい展開になったらその場で何か対策をヒネり出して、ほとんど取り繕うような感じで進行させようと。結果的には逮捕もされず、何とかやりきったわけだけれど。とにかく何か思いついたらやってみることですよ。法的に完全にアウトなら別だけど、微妙な感じだったらとりあえずやってみた方がいい。

中川 それに今回のは、仮に捕まったとしても懲役2年とか3年とか、そんなことには絶対ならないから(笑)。一口に逮捕と云っても、そこらへんのリアリズムを分かっておかないとね。起訴されるまで23日間閉じ込められるかもしれないけど、公判前整理をやって、「これこれをやったことは事実で、それについては争いません」とか「この点は争います」とか、チャチャッとやれば起訴の翌日には保釈されるんだから。保釈金はかかるにしても、まあその程度のことなんですよ。

外山 保釈を考えなくたって、裁判そのものが逮捕されてから2、3ヶ月で終わりますよ。この程度のケースなら間違いなく執行猶予がつくし、それで出られる。

中川 とくに前科のない人なら今回以上のことをやっても実刑にはなりません。政治運動をやる人は、そういうリアリズムを身につけなきゃいけない。

山本 今回は捕まるとしたらまず街宣車に乗ってる外山だろうから(笑)、その段階でぼくらは引いて救援に回る予定だったんですが、もしそうなったら一つやりたいことがあったんです。坂本龍一とかオノ・ヨーコとか、反原発を云ってる、あるいは云ってそうな“大物”アーティストに、「今回の外山以上の水準で反原発パフォーマンスをやってくれ、ムリなら我々にカンパせよ」って要求するつもりだった(笑)。

外山 実は東野は我がファシスト党専属の芸術理論家なんです。で、「外山は今回の行動もあくまで政治運動だ、革命運動だとか云ってますが、そんなものはポーズにすぎません(笑)。カッコつけて云ってるだけで、本当は前衛芸術運動です。その外山の“反原発アート”よりも面白い、あるいは芸術的に優れた“反原発アート”をもしやれるんなら是非やってください。外山もそれを望んでいます。もしやれないなら救援カンパも含め、外山の前衛芸術運動に絶大な資金提供をお願いします」というような趣旨のことを、もっともらしく東野に書いてもらって、反体制ぶってるカネ持ってそうな“アーティスト”のみなさんに送りつけようと。もちろん断ってきた奴の名前は全部公開するの(笑)。「ほほー、外山より面白いことやってくれるんですね、お手並み拝見」っていう、そういう悪質なことをやろうとしてた(笑)。

中川 今回も(二〇一二年の)夏ぐらいまでは良かったのにね。官邸前の大集会とか。なのに選挙が始まると全部そっちに回収されちゃうんだよな。

外山 このかん原発問題ではシングル・イシューということがしきりに云われてきたじゃないですか。だけどシングル・イシューについての考え方がまったく間違ってる。「原発反対」以外の主張は掲げないでください、というシングル・イシューでは運動はダメになるんです。「憲法を守れ」でも「自主憲法制定」でも、日の丸でも赤旗でも黒旗でも団体旗でも、「世界革命」でも「嫌韓嫌中」でも、「原発反対」なら他に一緒に何を掲げてもいい、もちろん現場で多少ケンカしてもいいというシングル・イシューでなければ、運動にダイナミズムが生まれません。

会場 事後逮捕の可能性はまだあるんでしょうか?

外山 うーん、可能性はゼロではないけど、難しいと思う。さっきも云ったように、やっぱり複数の県にまたがってることが最大のネックなんじゃないかな。例えば宮崎県警がこれを立件したら、じゃあ他の県でも同じことやったのに何で立件しないのかってことになっちゃうから、やるなら足並み揃えなきゃいけないでしょ。かなり大がかりなことになって、予算も人員も相当のものになる。有罪にできるかどうかも分かんない上に、有罪にできたとしても「犯罪」の中身自体がショボいんで(笑)そもそも重刑なんか科しようがない。足並み揃えるといってもやっぱりどこかの県警が中心にならなきゃいけないだろうけど、「じゃあウチが」とはどこも云いたがらないと思うよ。

中川 追っかけられた候補者たちにも全員、事情聴取しなきゃいけないけど、彼らもむしろこんなことを立件されるのはイヤがるでしょう。

外山 裁判で、「だってあなた原発推進派なんでしょ?」って当然こっちは訊くことになるからなあ(笑)。

中川 そんなの絶対イヤだよ(笑)、ヤブヘビだ。

外山 やっぱりだんだん逮捕してほしくなってきた(笑)。まあもともと今回は仮に逮捕されてもそんなに真剣に裁判闘争を展開する気はなかったんだけどね。原発反対は本気だけど、今回の行動そのものは愉快犯的なものでしかないし、選挙なんてバカバカしいものに付き合ってあんまり長く拘束されるのも不本意なんで、「すいません、もうしません」と謝って、さっさと裁判を終わらせて最大3ヶ月で出てくるつもりだった。ツイッターでも書いたけど、愉快犯らしく「ムシャクシャしていた、相手は誰でもよかった」って供述しようと思ってたんだ(笑)。

会場 だいたい候補者のことをろくに調べずにやったんでしょ?

外山 「誤爆上等」とか云ってた(笑)。

中川 悪知恵は働くんだが計画性がない(笑)。

外山 誰も支持してないから、誰が通ろうが落ちようがどうでもいい。佐賀3区なんかさ、玄海原発があるから一応行ったんだけど、自民党と共産党しか出てないんだ。まあそういうところに原発は建てられちゃうわけだけど。で、そこで自民党を攻撃したら共産党を利することになっちゃうでしょ。過激派のモラルとして、共産党を利することだけは絶対やっちゃいけないってのがあるから、「両方落としましょう」って街宣した(笑)。「投票に行ってはいけません、投票率ゼロ%、自民党ゼロ票、共産党ゼロ票で、当選者ゼロをめざしましょう」って。アドリブでやってるうちにフト出た「佐賀3区に国会議員はいりません!」ってフレーズは我ながら秀逸だった(笑)。

会場 それは公選法違反の選挙妨害にはならないんですか?

外山 どうなんだろう。面白すぎて、ついやっちゃったんだけど(笑)。でも「投票率ダウン・キャンペーン」というのはファシスト転向前の一九九九年にも一度、福岡県知事選でぼくは大々的にやってて、その時は警察も「お願いだからやめてください」って云うだけで(笑)特に何もなかったよ。

会場 特定の候補を落選させようというのはダメなんです。「全員落としましょう」なら引っかからない。それに「とにかく投票に行きましょう」キャンペーンはみんなやってるんだから、その逆はいけないということもありえない。

外山 あまり深く考えてなかったけど、なるほど(笑)。まあ、選挙カーを追い回すのはともかく、「選挙反対」とかワケわかんない街宣まで取り締まりゃしないだろうとは思ってた。

中川 そんなの取り締まってたら税金の無駄遣いだ(笑)。

会場 他の時は言葉の使い方に気をつけてましたよね?

外山 うん。「何々サンを落としましょう」みたいなことは絶対云わなかった。「原発問題を争点にしましょう」と云うだけで、「推進派を落としましょう」とは云わない。「何々サンは原発推進派です」とは云うけど、「だから落としましょう」とは云わない。とくに投票日はいっそう気をつけて、余計なこと云っちゃわないように、アドリブを入れずに事前に決めたフレーズだけ延々繰り返した。投票日には候補者たちはもう選挙カーを出せないし、それどころか一切の選挙運動ができないんだけど、こっちは候補者じゃないから何の関係もない(笑)。一日じゅう、「誰が原発推進派なのか教えて回る運動を展開中です。自民党と維新の会の候補者は全員、原発推進派です。“何か”の(笑)参考にしてください」と街宣してまわった。これも次の選挙で全国の反原発派はやればいいですよ。

会場 投票日に投票所に行って、貼り出されてるポスターとか選挙公報を見て誰に投票するか決めるという人は案外いますよ。

外山 だよね。だから投票日に、一日中あちこちの投票所を巡回しながら街宣すればいい。今説明したように、云い方さえ気をつければ、これは完全に合法です。

会場 あと、「私は原発反対派なので何々サンに投票します」とか、逆に「推進派なので何々サンに投票します」と街宣して回るのも、その党の運動員とかでなければ公選法には引っかかりませんよ。個人の意見表明、立場表明にすぎないから。

外山 お、さすが極右政党(笑)。その手もあるね。ネガティブ・キャンペーンとしてそれをやることも可能なわけだ。「私たち原発推進派は自民党に投票します!」って過剰にやる。「命や健康より大事なものがあるんです!」とか、わざと反感を買うようなことばっかり云って。いわゆるホメ殺しだ。自民党の選挙カーと遭遇したら、「自民党のみなさーん、原発推進、頑張ってください!」って(笑)。

会場 警察に尾行された時に、「つきまとい」だって抗議しなかったんですか?(笑)

外山 そりゃまあ冗談としては云ってみましたよ。彼らは冗談にもマジレスしてくるから、「これは公務だからいいんです」とか云ってましたけど。

会場 交番に駆け込めばよかったですね(笑)。

外山 そうか、こっちが候補者にされたことを全部、警察に向けてやればよかったんだ。「誰からカネもらってんだ!」とか(笑)。

中川 えー、そろそろ予定の時間ですので、報告会はここでいったん終了して、この後さらにこの場で引き続き、交流会とします。3勇士のみなさんに盛大な拍手を!

  (拍手)