『アリババが40人の盗賊』5

 (舞台上にギターを抱えた外山)
 (ストラップが黒帯)
 (自作の「13番目の男」を弾き語る)

 闇の世界で生きている 黒幕さえ震え上がる
 不吉な名で知られている 国も法も奴を縛れない
 ケネディ暗殺の陰に バチカンの疑惑の陰に
 奴がいたという噂さ 確かな証拠はないが
 安っぽいヒューマニズムも 正義もモラルも感情もない
 マシンのような男だと 奴を見た者は小声で語る
 ラスプーチンの血を引くとも 毛沢東が育てたとも
 奴の素性を知る者はない かぎ回った者は二度と戻らない
  アーマライトが狙ってる おそらくあのビルのどこかから
  アーマライトが狙ってる スコープがおまえを捉える

 ゲスな連中のジョークに ニヤリともせず黙ったまま
 黒いビジネスの依頼を 壁ぎわに立って聞いてる
 「やってみよう」と奴は云った 依頼人は笑みを浮かべ
 何げなく差し出す右手が むなしく宙をさまよう
 「話は終わった」と背中向けて静かに歩きだす
 声もかけず近寄るなよ 新品のカーペットを汚すことになる
 最上階のスイート・ルーム 奴は決行の日を待ってる
 誰かの命と引き換えた カネはスイスの秘密口座へ
  アーマライトが狙ってる まさか思いがけぬ彼方から
  アーマライトが狙ってる スコープがおまえを捉える

 フリーメーソンの陰謀も ナチの残党も蹴散らし
 CIAの裏をかき アカどもの罠をすり抜ける
 裏切りは決して許されない 下手な云いわけはいらない
 奴の腕をご存じだろう 苦しみは一瞬のはずさ
  アーマライトが狙ってる まさか思いがけぬ彼方から
  アーマライトが狙ってる スコープがおまえを捉える
  アーマライトが狙ってる おそらくあのビルのどこかから
  アーマライトが狙ってる スコープがおまえを捉える

 (外山、「13番目の男」を弾き終えると、そのまま続けて「ゴッドファーザー・ワルツ」)
 (1回目はハミング、2回目は口笛で)
 (暗闇の舞台上に、葉巻をくわえた男が立っており、その火だけが明滅している)
 (極度に淡いスポットライトがその男を照らす)
 (目より上はコミックスからコピーしたゴルゴ13のお面)
 (実は川上だが暗くてよく見えない)
 (腕時計を見る)
 (少し間をおき、懐から「……」と書かれたフキダシを取り出して掲げる)
 (スポット、ゆっくりと消え、外山の演奏も自力フェイドアウト)

アリババが40人の盗賊